明るく軽やかに社会課題に触れる。『笑える革命』小国士朗が考える企画の力
誰でも同じルールの中で参加できるような「問い」を用意して、興味を持ってくれた人のそれぞれに「これならできる」を持ち寄って実行してもらう。お笑いの大喜利ですと、お題に対して"ボケ"が生まれますが、僕の企画するプロジェクトでいうと、お題を出したらたくさんのアクションが生まれるという感じです。 たとえば、みんなの力でがんを治せる病気にすることをめざすプロジェクト「delete C」は、世の中の様々なものからCancer(がん)の頭文字である"C"を消すというアクションを展開しています。 参加企業の皆様には、Cを消した商品をつくって販売していただき、それをユーザーが購入することで、売り上げの一部が「がん治療研究」に寄付されるというのが基本的な流れです。「Cを消すだけ」というアクションのシンプルさゆえに、プロジェクトを立ち上げて5年で150を超える企業が参加してくれただけでなく、中学生も高校生も、医療者もアスリートもアーティストも、癌の経験者もそうじゃない人も本当にたくさんの市民が「"C"を消す」取り組みに参加してくれるようになってきました。 もし、用意されたものが解決策だと、「その解決策を使うか、使わないか」という2択になってくると思うんです。でも、用意されたものがみんなが思わず解きたくなるような問いだったら可能性は無限に広がります。deleteCでいえば、「自分だったらどんな風にCを消そうかな」とみんなが考え始める。 たとえば、東京都・墨田区にある新日本フィルハーモニー交響楽団はおもしろかった。「delete Cに参加したい」と自ら名乗り出てくれて、「え、でもどうやってCを消すんですか」と聞いたら「ドの音は英語の音階でCに当たるので、ドの音を消します」と言ってくれました。これって、立派な大喜利ですよね。 それから先日は、高校生の方が「delete C 応援ラップ」をつくって歌った動画を送ってくれたこともありました。これは「Cを消す」という大喜利のルールからは外れていますし、寄付にもならないので、社会的な意義は大きくはないかもしれない。でも、僕はめちゃくちゃうれしかったんですよ。 「自分たちにできることってなんだろう?」って考えた末に、「ラップでdeleteCのアクションを啓発しよう!」って思ったわけですよね。どんな形でもいいから「自分にもできることがあった!」っていう答えを見つけられたら、人ってものすごい力が湧いてくると思うんですよね。まずはそういうところからでも関われたらいいじゃないってすごく思うんです。