K-POPの祭典『MAMA』挑戦し続けた25年間 演出担当&舞台監督が語る“存在意義”と“今年初の試み”
“技術と芸術”を組み合わせた『MAMA』独自のステージを作る発想の根源
■“技術と芸術”を組み合わせた『MAMA』独自のステージを作る発想の根源 ーー『Mnet 映像音楽大賞』時代から現在に至るまで、アーティストのパフォーマンスはもちろん、ステージセット、演出などを含めたトータルステージのクオリティ、そのコンセプチュアルなステージの基盤が確立されていたと思います。“既存の楽曲を新しくアレンジすること、すでに確立されているものとは異なる表現方法で披露する”というのはどのように発想されたのでしょうか。ハイレベルなステージを実現する上で最も重要視していることは何ですか? イ・グァンフン:新しい試みで新しい舞台を作り、舞台のクオリティを向上させることは、Tech&Art事業部(各種コンサートと放送システムを構築し、大型コンベンション現場の企画および安全、システム運営、デザイン構築などを担当しており、これに各種融合複合未来新技術などの応用を試みている部署)全員が参加して努力している部分です。技術的な部分と芸術的な部分がうまく組み合わされた舞台を作るために、絶え間なくコミュニケーションする熱意に満ちています。特に、私たち舞台監督チームと美術監督チームは隣り合わせに座り、頻繁にコミュニケーションを取りながら多くの話をしています。ハイレベルな舞台を作るために私が特に重要視しているのは、バランスです。装置やエフェクトがアーティストのパフォーマンスと調和し合うようにすることが最も重要だと思います。どんなに素敵なシーンでも、システム的な要素が過度に目立つと、むしろアーティストとパフォーマンスへの集中力を妨げる可能性があるからです。各ステージのコンセプトに合った照明、装置、エフェクトなどのアイテムを選択し、またバランスを取ってシーンを構想するのに多くの時間と労力を費やしています。 ーー『MAMA』のステージは毎年新しい要素を取り入れながら進化を遂げています。アイデアの源、参考にしているものなどはありますか? イ・グァンフン:新しいアイデアの源泉が特にあるというよりかは、日常生活のなかにいつもあるような気がします。たとえば、展示を観覧していても、「この作品を舞台に取り入れてみたらどうだろう」と考えながらメモを取ったり、メディアに登場する新しい実験や物を見て、「機械装置や特殊効果に取り入れてみたらどうだろう」と考えます。新しいものと既存のものを組み合わせて想像してみると、既存のものとはまた違った感覚のアイデアやアイテムが積み重なっていきます。また、KITECH(韓国生産技術研究院)、KAIST(韓国科学技術院)、GIST(光州科学技術院)など、国内有数の研究者のホームページやYouTubeチャンネルをお気に入りに登録しておいて継続的に関心を持っていると、AI(人工知能)や新素材、機械工学など、舞台に取り入れてみるべきいいアイデアが浮かんでくることもあります。そのようなときは、提案書を作って積極的にコンタクトして、協業を提案してみたりもします。私たちとしては、優れた技術力に裏打ちされた新しいものを舞台に披露することができ、アーティストとのコラボやメディアへの露出を通じて優れた技術力をお見せすることができ、お互いにいい機会になると思います。今回の『MAMA』でもさまざまな研究陣との協力を企画していますが、『MAMA』が持っているIPがあまりにも独歩的なので、協力要請に肯定的な反応をくださることが多いです。事前ミーティングを通じて技術を演出的に舞台に溶け込ませることのできる部分を見つけ出し、構想していきながら、技術と芸術のコラボをうまくお見せできるように努力しています。 ■審査方法の変更や「Best Choreography」部門設立の真意 ーー『MAMA』の魅力のひとつは、出演アーティストのコラボレーションステージです。昨年もX JAPANのYOSHIKIとTOMORROW X TOGETHERのTAEHYUN、HUENINGKAI、BOYNEXTDOORのJAEHYUN、RIIZEのANTON、ZEROBASEONEのHAN YU JINというボーイズグループのメンバーの共演などが話題になりました。 イ・グァンフン:『MAMA』ならではのアイコニックなコラボを実現するために、演出陣はとても苦労しています。昨年披露した「WONDER STAGE」の場合、90年代の伝説のアーティストと現代アーティストのコラボステージで最も気をつけた部分は、伝説のアーティストがその存在そのものがひとつのアイコンとして輝けるようにすることでした。X JAPANの「Endless Rain」という曲は、華やかな照明や映像、効果よりも、訴えかけるような歌詞とアーティストの心情がより重要だと考え、そこに集中できるように華やかな舞台演出を控えめにしました。アーティストに集中させるために、全体的にコントラストを強く出せるようにバックライトだけでコンセプトを決め、劇的で強烈な効果より集中力とムードを高めることができるLSG(スモークを発生させる装置)のような効果で雰囲気を演出しました。 ーー各アーティストのステージでは、どのように調整してひとつのステージを作り上げていくのですか? イ・グァンフン:同じ曲を聴いても、それぞれのアーティストやプロデューサーたち、そして私たち美術や舞台監督が受け止めるものや解釈は全て違うと思います。曲のムードやメロディを鑑賞し、解釈する過程で、普段からメモしているアイテムのなかから合いそうなものを見つけ、制作チームやアーティストと共有し、お互いに調整しながら新しいシーンを開発しています。 ーー昨年も大きなスクリーンによる映像表現、リアルタイムで合成されるAR演出など、楽曲の世界観を際立たせる舞台演出が話題になりましたが、今年はどのような新しい挑戦や試みを披露する予定ですか? イ・グァンフン:昨年は“REAL”と“UNREAL”の共存でしたが、今年の『MAMA』は“Surreal World”という全体的なビジュアルコンセプトのもとにハイテク装備が溶け込んだ“REAL”のステージに近いと思います。現実と仮想、時空を超えたステージと、オンラインとオフラインの境界を越えた臨場感のために、ステージのスケール感と機械装置演出を通じたパフォーマンスに多くのフォーカスを置いたので、その部分に注目して深く観ていただければと思います。 ーー今年から審査方法が変更されたことも話題になっています。たとえば「Album of the Year」の場合、販売量だけでなく、企画から音楽、アートワークまで、完成度、ビジュアル、影響力などを総合的に評価すると発表されましたが、今回審査方法を変更した理由とその背景をお聞かせください。 ユン・シネ:圧倒的なパフォーマンス、トレンドをリードする音楽、完成度の高いMVとアルバム、グローバルファンの目を引くビジュアルと世界観などを通じたストーリーテリングなど、K-POPが持つ魅力は非常に多様です。さまざまな魅力によってK-POPのトレンドとファンの消費方式も多様かつスピーディーに変化しています。これまで『MAMA』は、その年のK-POPの動向やトレンドなどを考慮してきただけに、企画からコンセプト、ビジュアルまでK-POPアルバムだけが持っている価値を照らし、K-POPアルバムを再定義し、それを正しく見ることができるように審査方式を高度化しようと考えました。 ーー振付けに関する部門として「Best Choreography」部門の追加も発表されましたが、どのような観点からこの部門を新設されたのでしょうか。 ユン・シネ:先ほど申し上げたように、多彩な魅力を持つK-POPを企画から音楽、アートワークまで、完成度、ビジュアル、影響力などを総合的に評価すると同時に、輝かしいK-POPパフォーマンスの力量と重要度を考慮し、アーティストと振付け師を照らすために、印象的なK-POP振付けに授賞する「Best Choreography」部門を新設しました。『MAMA』は今後も引き続き、絶え間ない挑戦と情熱で目覚ましい活躍を見せたアーティストと多くの関係者の功績を多角的に照らす計画です。 ーー今後『MAMA』をどのように発展させていきたいですか? ユン・シネ:『MAMA』は毎年、その年のコンセプトを設定し、盛り込み、授賞式全体を一貫するストーリーを素晴らしいアーティストと一緒にどのように具現化し、伝えていくか、たくさん悩んでいます。そして、何よりもK-POPを愛してくださる全世界の音楽ファンの方々の声を反映し、一緒に作っていく授賞式として確固たるものにするつもりです。他人が歩んでこなかった道を歩んできただけに、新しい挑戦で満たされるこれからの『MAMA』にたくさん期待していただきたいと思います。多くの方々の期待に応えられるよう、一生懸命準備していきます。 ーー最後に、今年の『MAMA』を楽しみにしている方に一言お願いします。 イ・グァンフン:今年の授賞式全般を包含するコンセプトである「BIG BLUR:What is Real?」のように、新しい技術力とアーティストのパフォーマンスがよく調和した、差別化されたステージをお見せできるように努力しています。皆さんを満足させ、感動を与えることができる超ハイレベルなクオリティのステージを作れるように努力して準備します。楽しみにしていただき、引き続き関心を寄せていただけますと幸いです。
伊藤聡志
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