田上奏大「この時期の失敗」は財産【若鷹ウインターリーグ奮戦記VOL.1】
ホークスでは若手選手の育成を目的として海外ウインターリーグへの選手派遣を実施している。21歳右腕の田上奏大は昨オフに続き、中南米のプエルトリコで武者修行を積んだ。小久保裕紀新監督の“秘蔵っ子”としても期待される右腕は異国の地で「悔しさ」を経験した。ただ、それを今経験したことが来季に必ずつながると力強く語るのだった。週刊ベースボールONLINEでは海外ウインターリーグでの彼らの奮闘ぶりを4回にわたり伝えていく。 【選手データ】田上奏大 プロフィール・通算成績
投手として初めて感じる壁と対峙
さすがにヘコんでいるようだった。 「オレ何してんやろと思いました」 ホークスの将来のエース候補として期待される田上奏大だが、投手として初めて感じる壁と対峙したのが今回のウインターリーグだった。 このインタビューの少し前、現地11月28日の試合のこと。開始直前のブルペンでは「調子はいい」と感じたというが、いざプレーボールの声がかかるとまったく制御がきかなくなってしまった。打者3人に13球を投げてストライクは1つのみ。3連続フォアボールでアウトを1つも取れず1回表途中でKOされたのだ。 本来、こんな投手ではない。プロ2年目だった昨年4月12日のロッテ戦(長崎)で球団10年ぶりの10代先発投手という肩書付きで早々に一軍デビューを飾った。しかもその試合では最速155キロの直球を投げて5回2/3を2安打無失点とほぼ完ぺきに相手を抑え込み、白星こそつかなかったが自身にもチームにもファンにも明るい未来を示す堂々たる投球を披露したのだった。 今季もウエスタン・リーグで5月末まで防御率2点台を収めて一軍からお呼びがかかるのを待っていたが、6月に入るとやや調子を崩し、7月2日の登板で右肘に違和感を訴えた。実戦復帰は9月中旬。2カ月以上も戦列を離れてしまい「一軍に上がれない悔しいシーズンになってしまった」と振り返る。 そんな折、球団からプエルトリコ・ウインターリーグ派遣の話をもらった。田上は前年オフも同地で武者修行を行っている。過去の例を見れば2年連続は異例なのだが、それこそが田上への高い期待値の表れだ。中南米の野球強国の1つに挙げられるプエルトリコ。所属したチームは昨年と同じ「ヒガンテス・デ・カロリーナ」。ヒガンテスを和訳すると巨人。つまり、英語名ではジャイアンツということになる。