Media Briefing[日本版]: Google の不透明さに、メディアも広告主も「見て見ぬふり」をするしかない?
「森を見て木を見ず」と言うべきか、なぜ蛇口から水が出てくるのか知らなくても問題はないと言うべきか。 ともかく、専門的なプロセスや背後にある複雑なシステムについて、万人がすべてを理解しておく必要はない。技術的な詳細を理解することと、技術の利用とは必ずしも連動していないからだ。その意味では、透明性というのは大した問題ではないかもしれない。しかし、Googleの検索をはじめとするアルゴリズムの数々における話となると別だ。なにせ広告配信から測定、検証、各種データの取得、メディアのトラフィックと、デジタル領域を形作るあらゆる要素が拠って立つ存在なのだ。「知らなくてもいい」では済まされないことが多すぎる。 Googleが築き上げた「検索」に対する広告やメディアの有りようは、依存と表現するのすら控えめであり、もはやデジタルの構造の一部、(大半の)広告主やエージェンシー、パブリッシャーにとっての酸素のようなものだ。それゆえにその独占性はしばしば規制当局との衝突を生み出し、今のところGoogleの旗色が悪い。ただここで問題にしたいのはデジタルにおける寡占の是非ではなく、Googleの透明性の欠如だ。前述のように、「文句を言わず、黙って利用しておけばいい」とするにはGoogleは存在感がありすぎる。
メディアの生殺与奪権を握る
はじめに断っておくと、別にGoogleに悪意があって何かを覆い隠している、などとは考えていない。ただ、支配的な立場にあり、自社製品に代わる競合製品が存在しない状況では、説明を回避したり、情報を開示しないといった形でさまざまな問題を事実上無視することができる。 そのひとつが、メディアにおけるGoogleの参照トラフィック減少問題だ。X、Facebook、インスタグラム、TikTok各社がユーザーを自社プラットフォームにできるだけ長くとどめようと画策しているため、パブリッシャー各社はソーシャルメディアからの参照トラフィック激減を経験しているが、Googleの参照トラフィックも減少していると懸念を示すパブリッシャーが複数存在する。 実際、米DIGIDAYの取材では2名のパブリッシャー幹部が自社のサイトの中には、Googleからの参照トラフィックが前年比で同レベルもしくはわずかに上昇しているサイトもあるものの、60%から70%も減少しているサイトもあると証言している。一方、ChartbeatやSimilarwebをはじめとするサードパーティのオーディエンス測定企業の報告を見る限り、Googleからの参照トラフィックは総じて、2022年10月から2023年10月までは前年比で変化が見られないという。 単なるメディアパワーの低下をGoogleの所為にしているとか、つまらないコンテンツが淘汰されているだけなのか? そうとも言えない。個々のメディアを見比べてみると60%以上減少しているところもあるかと思えば、15%から20%の減少ですんでいるところもある。そして、その2つのメディアを並べて比較したところで、質やコンテンツ内容にそれほど違いがない。この一貫性のなさはどこから生じるのだろう。米DIGIDAYに証言した幹部は、Googleが2023年内に行ったアルゴリズム更新は8~9回ほどと、これまでにない回数(これまでの更新は、過去5年で5回か6回かそれを上回る程度だったという)のように感じられたとし、その影響の可能性を指摘している。 Googleの広報担当者は文書で米DIGIDAYに「弊社は常にシステムの改善を続けているので、今後も適切かつ有益な結果をお見せできます。弊社のいかなる更新も、パブリッシャーを含む特定のページやサイトを対象にするものではありません」と回答した。今起きている参照トラフィック減少は、幻覚や事実誤認なのだろうか。