修学旅行は何のためにあるの? 思い出づくり!? 起源は“軍事訓練のための遠足”だったが、今は…
◆「探究学習」で学びが深まる修学旅行
学びが一番といっても、これまでは“思い出づくり”の側面が強調されていた部分もあります。しかし近年は、確実に学びの側面が進化しつつあります。 その背景にあるのが「探究学習」。探究学習とは、学生が自ら課題を設定し、情報を集め、整理・分析し、結果をまとめて発表するという一連の学習活動のことです。高校では「総合的な探究の時間」として数年前から必修化され、小中学校でも「総合的な学習の時間」として取り入れられています。 最近は修学旅行も、この探究学習の場の一つにする学校が増えています。探究学習にはさまざまな体験が必要ですが、学校内だけでは限界があるからです。 修学旅行は事前学習、現地での体験、事後学習の一連の流れで進みます。この過程で探究学習を組み合わせることにより、特に事前学習や事後学習が充実しやすく、また現地でも探究学習を意識したプログラムを体験することで、より深い理解が進みます。 神社仏閣を見て「教科書と同じ!」と思ったり、原爆資料館を見て単に「怖い」と感じたりと単なる感想で終わっていたような事後学習も、より深い体験や学びへと変化しているようです。
◆探究学習を考慮したユニークな体験プログラムが充実
探究学習を考慮した修学旅行向けの体験プログラムは各地で増えています。たとえば姫路城では、実際に城の修繕に携わった職人さんの作業を見学して、漆喰(しっくい)塗り体験をする体験プログラムを始めています。 「現地での学びが深まるのはもちろん、地元に戻ってから自分の地域の伝統技術に目を向けるきっかけにもなります」(竹内さん) 長崎の新しい平和学習プログラムでは、従来のようにガイドに案内されて原爆資料館を見学して終わりではなく、その後に平和ガイドや市内のホテルスタッフを交えたグループワークをします。 「現地の人との直接の対話から受ける刺激は大きく、生徒はより多くのことを感じるはず。当然、学校へ戻ってからの事後学習の深さも変わってきます。ウクライナやガザなどの世界情勢にもより興味を持てるようになるのではないでしょうか」(竹内さん) ほかにも野生動物との共生をテーマにした体験や、防災・減災学習のための東北・熊本訪問など、探究学習と組み合わせたいろいろな修学旅行が増えているそうです。 ちなみに最近は、修学旅行のコストも高騰しており、保護者の目もシビアになりつつあるのだとか。探究学習で学びが増えれば、保護者のコストに対する納得感も増しそうです。
▼古屋 江美子プロフィール
子連れ旅行やおでかけ、アウトドア、習い事、受験などをテーマにウェブ媒体を中心に執筆。子ども向け雑誌や新聞への取材協力・監修も多数。これまでに訪れた国は海外50カ国以上、子連れでは10カ国以上。All About 旅行ガイド。
古屋 江美子(ライター)