米国なら起きなかった佐々木の決勝登板回避騒動
たらればの話をしても仕方がない。日本の高校野球は、全面的に米国を見習うべきとも思っていない。 けれども、大船渡高の佐々木朗希投手の決勝戦での登板を國保監督が回避した問題が日本で大きな反響を呼び、その賛否を巡っての議論が広がっているため、あえて「もしも、佐々木が米国の高校生だったら」と仮定して、パラレルワールドの世界へ入り込んでみた。 米国の高校野球は、2017年シーズンから、ほぼ全ての州で投球数制限と休養日規則を導入している。以前はアウト数やイニング数制限で投球数が増えないようにしていたが、より厳密に投球数と登板間隔を定めた。 規則が怪我を予防するという保障はない。連投で球数が多くても怪我をしない選手もいる。しかし、投球数や疲労困憊した状態は、投手の故障のリスク要因であることが医学的に分かっているから、規則の導入に踏み切ったのだ。 同じ高校生の野球といえども、日米の高校野球には違いがある。投球数の問題を考えるうえで、以下の4つの大きな違いがある。 (1)米国の高校野球には甲子園大会に相当する全国大会がない(民間のトーナメント大会は事情が異なる)。 (2)7イニング制である。 (3)シーズン中はリーグ戦で、州の優勝を決める大会だけがトーナメント方式。 (4)学校の生徒数や地域によって、ディビジョン分けがされている。州の優勝を決めるトーナメント戦もディビジョンごとに行われる。 まず、大船渡高の夏の地方大会の日程と佐々木の投球数を振り返ってみた。 【7月16日】2回戦 佐々木の投球数19 【18日】3回戦 投球数93 【21日】4回戦 投球数194 【22日】準々決勝 登板せず 【24日】準決勝 投球数129 【25日】決勝 登板せず 米国は州によって規則が少し異なるが、野球の盛んなフロリダ州の投球数と休養日規則は次のようなものだ。 (1)17歳以上の投手の場合(以下同様)。1日最大105球まで (2)76球以上投げた場合は4日間休む (3)61-75球投げた場合は3日間休む (4)46-60球投げた場合は2日間休む (5)31-45球投げた場合は1日休む (6)30球以下は翌日も投げられる。 (7)投手が15-16歳であれば、1日最大95球までしか投げられない。