野球を楽しむ「ラミちゃんCUP」開催 VAMOS TOGETHERの活動を通して届けたい想いとは
障がいがあってもなくても一緒に「VAMOS TOGETHER」
ラミちゃんCUPには、まだスペシャルニーズの子どもたちがチームで参加したことはないが、ラミレスさんは「参加はもちろんウエルカムです。とにかく誰でも参加できるので」と話す。 VAMOS TOGETHER全体としては、少年野球大会のほか、企業とのコラボレーションもあり、アイスホッケー体験やボウリング、プログラミング教室など様々な活動をしている。 単発のイベントだけでなく、スペシャルニーズの子どもたちのチアリーディングチームがあったり、美保さんが経営するジムで「スペシャルニーズクラス」のトレーニングがあったりする。 「ラミちゃんの名前で来てくれた人が、『スペシャルニーズって知らなかったけど一緒にやってみたら楽しかった』というきっかけの場所になるように、色々な分野で色んなことをしています」
この団体の活動自体が「家族」でありたい
ラミレス家には、ケンジくんを筆頭に4人の子どもたちがいる。ベネスエラからのコーヒーの輸入や、タレントとしてスポーツ関係、マスコミ関係と様々な仕事をするラミレスさんと、ジムを経営する美保さん。忙しさも苦労もあるが、活動は家族で参加するためのものだ。 美保さんは言う。 「この団体を作るにあたって、色々忙しいことはあるんですけど、自分の子どもたちを犠牲にしてやるようなものではないと思っています。この活動自体が『家族』でありたいので、参加する方たちも、子どもを連れて行っちゃだめかなとか、この子を連れて行ったら迷惑かな、とかいうのは一切考えないで欲しいんです」 スペシャルニーズは色々な特性があるので、大きな声を出したり、座っていられない子もたくさんいる。それもウエルカム。その場で色々な人々が遊んでくれる、騒いでも大丈夫だ。 「恥ずかしいとか迷惑かけるんじゃないかとか、その気持ちでさえ持ってこなくていいんです。だからうちは、必ず連れてきて、自由にしています」
将来は自立へ。可能性を知ることが第一歩
美保さんは、いずれは障がいを持つ人々に、個々の特性を生かした就職支援をしたいという。 「自閉症のピアニストの方がいるんですが、普段はずっと座っていられないけど、ピアノの前に座れば素晴らしいピアノを弾ける。その人は企業でパソコンの仕事をするようになりました。それも普通の人の倍の仕事をこなせる。そんなふうに仕事と人をマッチングできたら、と思います」 ダウン症にも個性がある。人により得意不得意があるが、総じてルーティンを決めれば必ず真面目にその通りにやるという。 俳優やアーティストとして活動する例も多くなり、仕事をしながら一人暮らしをしている人たちも増えてきた。日本ではあまり知られていないが、海外にはダウン症で弁護士になった例もある。まず教育システムが開かれているし、日本では聞かない種類の職業に就いた例や、結婚している人のニュースも伝わってくるそうだ。 ラミレスさんの長男のケンジくんは、以前のラミちゃんCUPで、公式Tシャツのデザインをしたことがある。得意な分野はアート?と思いきや、「体を動かすことがすごく好き」。逆立ちもできるそうだ。 「低筋力だから、できないから、と言われると親は守ってしまいがちですが、アメリカではたくさんトレーニングをしているダウン症の方たちもいます。そういうニュースを私たちもよく見るから、やらせてみようと思う。私たちからもそんな発信ができれば、少しでもやらせてみようとする家庭が出てくるかもしれません。一人でも多くの家族に何かしら影響が与えられたらすごく嬉しいです」 VAMOS TOGETHERの活動では多くの企業とコラボがあり、人との繋がりもどんどん増えている。参加した家族の勤め先から縁が繋がることもあり、いずれ企業と人のマッチングに繋げたいと美保さんは考えている。 スペシャルニーズのある人もない人も、みんな一緒に楽しむ。その活動を広げていくことで、将来の可能性も広がっていく。ケンジくんが日々成長を見せるように、VAMOS TOGETHERも成長していくのだ。 「私たちも障がいを持つ子の親としてまだ9年目。子どもと一緒に成長中なんです」 (取材・写真・文/井上尚子)
井上尚子