農業県に不安広がるTPP 「2つの影響調査」に議会が白熱
全国の農業県を中心にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の影響と対策をめぐる論議が議会などで白熱、農業の現場にも波紋を広げています。「果樹王国」ともいわれる長野県は米、肉牛なども含む広い分野で独自の影響調査を発表しましたが、農協の調査の方が影響額が10数倍も大きく、関係者は困惑。直接影響を受ける農家は「日本農業の品質に勝負をかけるしかない。しかし、いずれ海外からの風当たりは強くなる」と厳しい生き残り策の模索を始めています。 【図】TPP交渉 コメなどの「重要5項目」はなぜ重要か?
かけ離れた2つの調査結果
日本、米国、ペルー、マレーシア、オーストラリアなど環太平洋の12か国で2月に署名されたTPPは、農業、医療など広範な分野で関税を撤廃、減少させるなどして大きな自由貿易圏を作り上げ、世界経済にもインパクトを与えることになります。 農業などへの影響が心配されることから、長野県は国の影響調査に準じて独自に農林産物の生産額への影響を調査し、先月8日に発表しました。それによると、長野県独自の品目としてブドウ、レタスなど8品目も加えた計19品目の生産額への影響は合計で24億円余の減少。このうち牛肉は8億4000万円余、豚肉3億2000万円余、ブドウとレタスはそれぞれ3億8000万円余減少。リンゴの生果と米は「影響ゼロ」となっています。 これに対し長野県農協グループの影響調査は大学の専門家などによるもので、長野県全体の農林水産物の生産減少額は392億円余に上るとしています。その内訳はリンゴ116億円余、肉用牛45億円余、ブドウ42億円余、豚39億円余、米30億円余など。主力の野菜・果樹を中心に肉用牛、豚への大きな影響を指摘しています。 長野県農協グループは、「これまで国会でも聖域とされてきた米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の重要5品目の30%の関税撤廃の方向は問題。特に長野県の主力でもある園芸品目の大部分の関税が撤廃されることになり、農家への打撃は計り知れない」として強く反発してきました。