和牛甲子園優勝の”牛児”に聞く 「農家っていいな」「愛情負けない」
和牛飼育に青春を懸ける全国の“高校牛児”が集結し、大人顔負けの飼養管理の工夫や枝肉の仕上がりを競う「和牛甲子園」。東京都内で開かれた第7回大会で総合優勝した鹿児島県立鹿屋農業高校と、取組評価部門で最優秀賞を獲得した岐阜県立加茂農林高校の生徒らは、和牛への熱い思いを胸に舞台に立ち、栄冠を獲得した。 【画像】 取組評価部門の最優秀賞を獲得した加茂農林高校のメンバー
総合優勝は鹿児島県立鹿屋農高
飼料高などで子牛価格が下落する中、「今こそ地域の未利用資源の活用で自給率を高めることが重要」と訴え、竹の有効利用に挑戦した鹿屋農高。枝肉の評価は「他の共励会のチャンピオンに劣らない」と絶賛され、出場7回目で初の頂点に輝いた。 「鹿児島黒牛研究部」の文字が刺しゅうされたそろいの服を着て、5人で上がった受賞インタビューのステージ。同高の森元陽哉さん(17)は全国の牛児を前に、「日本一の和牛農家になります」と力強く宣言。門原真央さん(17)は「世界一になります」、浦崎聖斗さん(17)が「宇宙一になります」と追いかけ、会場を沸かせた。 主要メンバーは全員2年生。1年時は同じ寮で過ごし、クラスも一緒という5人は、牛を中心に共に過ごす日々の中で、優勝の原動力となったチームワークを培ってきた。 入学後、ゼロから牛について学んだという長嶺葉月さん(17)は「休み時間にも牛のことを語って、教えてもらって、知識を培えた」と仲間に感謝する。山口蒼真さん(16)は「出荷まで見送って、最後までやり遂げられたという達成感を感じた。やっぱり肥育農家っていいなと思えた」と目を輝かせる。 「地域にある資源だけで牛を育て、鹿屋100%の和牛肉を食べたい」。和牛と向き合う日々の中で、いつかかなえたい夢もできた。
取組部門最優秀は岐阜県立加茂農林
飼料用米の活用で生産費を削減しつつ、スマート機器を活用した体調管理で牛を健康に育て上げ、取組評価部門の最優秀賞を獲得した加茂農林高校。3年の秋田凪生さん(18)は、出品した大好きな牛の「琥珀」と「ふくはれ」に、「誰よりも愛情を込めてきた」と胸を張る。 牛たちの命と向き合う日々は、「かわいい、楽しいだけではやっていけないことも多かった」(同高3年の橋本美桜さん)。それでも、最初は懐いてくれなかった牛たちが、ブラッシングするごとに距離を縮めてくれるようになり、愛情は増していった。 岐阜県が誇る「飛騨牛」として、2頭の枝肉を出品した和牛甲子園の共励会では、県内の仲間が一丸となり、拍手とかけ声で一緒にせりを盛り上げてくれた。「チーム岐阜」の一体感を感じ、その一員として「飛騨牛」を育て上げられたことに、うれしさと誇らしさが込み上げた。 先輩の取り組みを引き継ぐ2年の渡邉煌さん(17)は、「(2032年の)岐阜全共には自分の牛を出品したい」と夢を描く。(斯波希)
<ことば> 和牛甲子園
就農意欲の向上や、高校生同士のネットワークづくりを目的に、JA全農が主催する。1月に開かれた大会には、過去最多となる25道府県41校が出場した。
日本農業新聞