「テレビ的なお笑い」が苦手なラバーガールがTikTokで見つけた自分たちの強み
「テレビ的なお笑い」が苦手な2人
――「誰かが作ったものに参加するのが得意じゃない」とのことですが、テレビ的なお笑いが苦手? 大水:そうですね。例えば芸人が30人ぐらいひな壇に座っている番組で、本当に一言も喋らずに帰ったりしたことがあります。 飛永:苦手なことはやらないようにしています。この仕事に1日行って1万円もらえるかもしれないけど、嫌な気持ちになるんだったらやめよう、みたいな。 ――他にはどんなものが苦手ですか。 飛永:食リポ系は苦手だよね。 大水:あとは、体当たり系のリアクションものとか。 ――テレビにあまり良い思い出がない? 飛永:それは僕ら2人の間で違うんですよ。大水さんは僕と比べたら、なんでも出たいほうだから。 大水:基本的には体当たりとかじゃなければ。というか、スタッフさんが僕を必要としてくれるのなら、別に体当たりでもいいんですけど、一応ポジティブに考えようという気持ちです。 ――スタッフが考えた役割でイジられてみるみたいなのはアリですか? 飛永:苦手ですね(笑)。芸人何人かが同時にやるオーディションで、ディレクターさんがわざと「ぜんぜん面白くない」と高圧的な態度できて、どういう反応をするか試すようなものがあったんですけど、嫌だなと思って、途中で帰りました。 大水:最近は変わってきたけど、スベった姿を見せられない、みたいなところが僕たちにはあるんだと思います。でも、スベったり、負け顔を見せられたりする芸人の方が強かったりするじゃないですか。 ――負け顔を見せられる強さを、例えばどんな芸人さんに感じますか。 大水:なんでもできるということで言うと、(バイきんぐの)小峠さんは、人のこともいじれるし、自分がイジられて笑いをとることもできるし、すごいなと思うんですね。僕らはその点まだ弱いから。
飛永は大水のプロデューサー? 2人の不思議な関係
――ところで、テレビに出られるなら出たいという大水さんと、嫌で帰ってしまう飛永さん。温度差が衝突につながることはありませんでしたか? 大水:ありますよ! そういうときは2人で話し合って、出るかやめるか決めるんですけど、結構嫌な気分になります。 飛永:僕はもしかしたら、スベッてる大水くんを見たくないのかもしれない。大水くんプロデュースじゃないけど、大水くんにはこうあってほしいという理想があるから。そういう意味では、僕がずっとブレーキをかけている部分があります。 大水:なんかマネージャーみたいなことを言うんだよな。 飛永:それはあるかもしれない。見た目とか雰囲気とか含め、大水くんにはすごい才能があるからこそ、 一番良い出方をしてほしいという思いがあるんです。マネージャー気分もあるし、プロデューサー気分もある。それこそ大水さんは野球好きでお酒好きで、今は相撲にハマっているふつうのおじさんなんですね。それをいかに隠すかが僕の仕事みたいな感覚があります(笑)。 ――プロデューサー気分になってきたのは、いつぐらいからですか。 飛永:ちょっとおしゃれじゃないといけないとか考えるようになったのは、コロナ禍にTikTokとYouTubeを始めて、2人で映像を作ることになってからかな。大水くんを大写しにして面白いことをやるという形になって、プロデュース感がさらに強くなってしまったかもしれない。 ――そういう関係性の変化を、大水さんはどう感じていますか。 大水:僕はもっと前に出てほしいなと思いますよ。コンビでやっている以上、2人しかいないのに、1人に下がられると、1人で闘わなきゃいけないから。 飛永:しんどいとは思います。 大水:僕が番組に出た時、矢面に立ってうまくいけばいいけど、あまりうまくいかなかったときに、終わってから「あそこはもっとああいう風にした方が」みたいなことを言われると、「いや、2人で出ていたのに、なんで俺だけ頑張るんだよ」と、そういうストレスはあります。 飛永:でも、コンビだけど個人みたいなところはあって。大きい良い番組に出れば出るほど、優秀なMCの方がいらっしゃるから、僕よりも大水くんを上手に面白くしてくれる。だから、1人でもいいから大水くんに活躍してほしいんです。 ――大水さんが単独で活躍することにジェラシーはないですか。 飛永:ジェラシーはないかな。でも根本には、ギャラが切半で、大水くんが活躍すると僕も潤うっていうのがあるかもしれない(笑)。逆もしかりですが。 ---------- 【ラバーガール プロフィール】 飛永翼(ツッコミ担当)と大水洋介(ボケ担当)のコンビ。共にスクールJCA10期生。「爆笑オンエアバトル」「オンバト+」(共にNHK総合)で好成績を収め、チャンピオン大会に6度進出。また「キングオブコント」では2010年と2014年に決勝に進出している。YouTubeやTikTokで配信している動画も人気で、各チャンネルの合計登録者数は100万人を超えている。8/21開催の人力舎の芸人が勢ぞろいするネタライブ「夏ネーター2024」に出演。詳しくは公式HP、公式Xにて。 ----------
田幸 和歌子(フリーランスライター)