大阪・関西万博の会場建設に黄信号 半導体工場がライバル
160を超える国や地域が参加する予定の2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の開幕が1年後に迫る2024年4月、建設業界には時間外労働の上限規制が適用された。時間外労働が年720時間までに制限され、万博に関わるゼネコン各社も、この規制を前提に受注し工事を進めてきた。 【関連画像】全4工区の統括施工者。大林組など、北東工区の統括施工者が会場全体の調整を担う その結果、現時点で建設業者が決まっているパビリオンや休憩所などの建設物は、ほとんどが開幕前に完成しそうだ。 会場の「PW(パビリオンワールド)北東工区」を統括する大林組の高木昌紀・夢洲総合工事事務所総括所長は「自社が担当する工事では、4週間に8回、稼働を止める『4週8閉所(週休2日に相当)』を徹底している」と話す。 一方で、各国・地域が自ら設計して建設するタイプA(敷地渡し方式)を希望する海外パビリオンのうち、10件以上の建設業者が決まっていない。すでに着工しているものもあるが、その多くが24年に入ってからで、当初のスケジュールからは大きく遅れている。 着工が遅れ、工事の期間が短くなれば、その分、投入しなければならない労働力は増える。だが、国内では、都市の大規模再開発や、高速道路の改修、大規模な半導体工場の建設などが実施されており、今からでは人手が集めにくい。 加えて、建設作業員にとって、万博の会場が「魅力的な職場」であると言えない現状が状況を悪化させている。ここで得られる報酬が低いといわれているのだ。大手ゼネコンの幹部は、「熊本や北海道で進んでいる大規模な半導体工場の建設は、労働単価が高い。そこに人材をドーンと持っていかれる」とぼやく。 全国建設労働組合総連合(全建総連)関西地方協議会の酒井仁巳事務局長は、「組合に所属する2次、3次下請けの業者に話を聞いたところ、発注者との関係を維持するため、渋々工事を引き受けたという声が少なくなかった」と話す。万博工事の2次下請け業者の社長も「他の大型工事と比べると、単価は中の下」と明かす。 こうした事態に直面し、タイプAパビリオンを建設する一部の国は、建設費を増額して人手を集め始めた。24年1月に着工したある国のパビリオンは、複雑な構造が売り物なだけに、建設にも人手がかかる。そこで、労働者の賃金単価を引き上げて募集を始めた。人員を増やすと同時に、24時間の施工も可能な交代制にして、土日や祝日も工事を進める計画だという。