事業と組織は表裏一体、最高の組織づくりに不可欠な事業戦略はどう策定する?
原則(4)差別性:競合に勝ち続ける「違い」を見つける 原則(5)独自性:自社にしかない「らしさ」を見つける 原則(6)顧客価値:「顧客から選ばれる理由」を明確化する 差別性とは、競合の商品サービスにはない、自社商品サービスの強みや特徴のことです。自社を競合他社と比較したときにナンバーワンになる、つまり程度(How)の違いを表し、数字などの論理で選ばれることを目指します。差別性を発見する際は、「お客さまが最初に、競合よりも自社を選ぼうとしてくれる、他社との『違い』とは何か?」という問いに答えます。 例えば、ファストフードチェーンのモスバーガーは、業界最大手のマクドナルドと差別化するために「高価格な分、高品質」というポジションを確保し、コストをかけてでも商品のおいしさで優位に立つことに注力しているわけです。 独自性とは、その企業が持つ独自の強みのことで、企業ブランドのアイデンティティともいえるもの。自社とは異なる業界の会社と比較してもオンリーワンになる、つまり種類(What)の違いを表し、愛着などの感情で選ばれることを目指します。独自性を発見する際は、「お客さまが最終的に自社を選んでくれる、自分たち『らしさ』とは何か?」という問いに答えます。 例えば、エナジードリンクのレッドブルは、多くの類似商品が疲労回復というマイナスからの好転をアピールする中、「レッドブル、翼をさずける」というフレーズで、強いプラスのイメージを前面に押し出し、独自性を発揮しているのです。 こうして明らかにした差別性、独自性を基に、「お客様から選ばれる理由」を言語化していきます。なぜ、この工程が必要かというと、差別性や独自性は、どうしても「自社視点」で考えてしまうことが多いからです。自社視点で発見した強みを、顧客にとっての価値に変換してはじめて、お客さまに選んでいただくことができます。 その際のポイントは、「ドリルを売るのではなく、穴を売る」を意識すること。これはマーケティング業界でよく使われる言葉で、「商品を売るには、顧客にとっての『価値』から考えよ」という意味です。例えば、工務店を訪れたお客さまが、買いたいドリルの有無を店員にたずねたとします。しかし該当する商品はなく、店員は「品切れです」と回答しました。すると、お客さまは何も買わずに帰ってしまいます。 そうではなく、「何をするためにドリルが必要か」と理由を聞けば、もしかしたら別の商品で役割を果たせるかもしれません。お客さまは「ドリルを買う」ことが目的ではなく、「穴を開けること」を望んでいるのです。 これこそ、商品を売るには「顧客にとっての価値」から考えよ、ということ。私たちはつい、売り手側の視点で考えがちですが、まずは「顧客価値」から考えることが大切なのです。
宮本 茂/白木 俊行