タムロン社長、CFO設置やIR部門拡充に意欲-株主還元で株上昇
(ブルームバーグ): カメラの交換レンズを手がけるタムロン株は2月に株主還元策の充実を発表した後一段高となり、上昇基調が続く。こうした中、桜庭省吾社長は、最高財務責任者(CFO)の設置やIR部門拡充の考えを示した。
桜庭氏は5日のインタビューで、CFO設置は外部人材の登用も含めて「当然考えている」とした。IRの拡充にも意欲を見せたが、人材獲得に苦労しているとも述べた。
タムロンは2月、2026年12月期までの中期経営計画を発表。総還元性向60%を目安とし、機動的な自己株式取得を実施するなどと表明した。あわせて効率的な経営の構築を目指すとしており、財務戦略の立案・執行の体制を強化する考えだ。
桜庭氏は狙いについて、前期(23年12月期)末時点で約80%だった自己資本比率を少し下げ、「適正なキャッシュアロケーションを目指したい」と述べた。新規事業にも資金を振り向けたいという。
同社株は2月の中計発表後、急騰。上場来高値を更新する場面が続いたが、10日の終値は前日比1%安の6900円だった。
岡三証券の島本隆司シニアアナリストは、株価の好調は資本政策の発表もあるが、根底にあるのは交換レンズで「利益をしっかりと出しているところ」だと指摘。写真関連以外の事業成長は今後の課題であるものの、交換レンズの需要は今年に入っても堅調で、今後の株価も「基本的に安定的に上がっていく」との見方を示した。
1950年創業のタムロンは、カメラ・双眼鏡用レンズの製造を祖業とし、光学技術を横展開して監視カメラやFA(工場の自動化)、車載などに事業を拡大してきた。ブルームバーグのデータによると、ソニーグループやニコンに製品を供給する。
今期(2024年12月期)の営業利益は、写真関連事業の伸びなどを見込んで前期比5.1%増の143億円を計画する。カメラ市場自体は横ばいが続くが、高価格帯のミラーレスカメラ用製品のラインアップを拡充するほか、南米やアフリカ地域の開拓も進める。現時点で5%程度の交換用カメラレンズの世界シェア(金額ベース)を今後は7-8%に引き上げたいという。