石川の酒を世界発信 「酒造り」無形文化遺産へ
●ユネスコ勧告、国内23件目 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関は、日本酒や本格焼酎、泡盛などの「伝統的酒造り」を無形文化遺産へ登録するよう勧告した。文化庁が5日発表した。12月2~7日に南米パラグアイで開かれるユネスコ政府間委員会で正式決定する見通し。実現すれば国内23件目となる。元日の地震で能登の酒蔵が打撃を受ける中、石川県内の酒造会社は「日本酒文化を世界に発信するチャンスだ」と期待した。 ●県酒造組合連「伝統手法、一丸で守る」 勧告は、酒造りの知識と技術が「個人、地域、国の三つのレベルで伝承されている」とした上で「社会にとって強い文化的意味を持つ」と評価。祭事や婚礼といった日本の社会文化的行事に酒が不可欠であることや、地域の結束にも貢献していることを挙げ、登録に必要な基準を満たすとした。 伝統的酒造りは、カビの一種であるこうじ菌を使い、蒸したコメなどの原料を発酵させる日本古来の技術。複数の発酵を同じ容器の中で同時に進めるという、世界でも珍しい製法だ。各地の風土や気候などに合わせながら杜氏(とうじ)らが手作業で洗練させ、継承してきた。 この手法で造られる酒には日本酒や本格焼酎、泡盛のほか、もち米と焼酎を使って甘みを引き出す本みりん、もろみに木灰を加えて保存性を高めた灰持酒(あくもちざけ)などがある。阿部俊子文部科学相は5日の記者会見で「杜氏、蔵人などが築き上げてきた大切な文化だ」と述べ、登録へ「最善を尽くしたい」と意気込んだ。 無形文化遺産への登録勧告に対し、石川県酒造組合連合会の車多一成会長(55)は「業界一丸となって伝統的な酒造りを大事に守っていきたい。能登の酒への注目も高まり、復興の後押しになる」と喜んだ。