日本代表が「飲み込まれていた」可能性も 北朝鮮戦でも改善されなかった課題とは
森保ジャパンでは、連動に創意工夫が求められるべき攻撃が、個人の走力や強度に特化したものになっている。緩急の変化や機転の効いたプレーで相手のメンタルやパワーを削ることができない。リスクを減らし、一発のリターンに賭ける縦に速い攻撃はひとつの手だが、精度が低くなると相手にいたずらにボールを渡すことになり、自滅の道に向かう。 そもそも、森保ジャパンはカタールW杯予選で攻撃のデザインに苦しみ、守りに立ち返って、どうにか勝ちを重ねた。本大会では冷遇から呼び戻した鎌田大地が「できる限りボールを握って」と攻撃を引き回し、金星を拾った。鎌田が限られた時間でも能動的にテンポを生み出し、三笘薫、堂安律、久保建英、田中碧の攻撃につながっていたのだ。 「よりボールを持って、能動的に戦えるように」 カタールでベスト16に終わった後、続投した森保監督は約束していたが、「蹴る」傾向は強くなった。アジアカップでは鎌田が不在、GKが不安定で、攻撃どころか、守備もおかしくなっていた。さらに北朝鮮戦は三笘、久保などもいなかっただけに......。 「(後半途中に)交代で入った選手が個々の役割のところで力を発揮し、勝ちきることができました。監督としては、彼らのことを褒めてあげてほしい」 森保監督の言葉は正しい。守備の安定で、再度からカウンターで脅威を与え、逃げきりではなく、勝ちきっている。 しかし、"結局はこの戦いなのだな"という小さな落胆が残った。相手の意表をついて、発想の変幻自在で驚きを与えるスペクタクル性。そこは欠如したままだ。
小宮良之●文 text by Komiya Yoshinori