「県警批判をしたら仕返しにワナにはめられかけた」 元産経記者の経験した「警察の怖ろしさ」
警察批判がきっかけか
これにはちょっとしたいきさつがあった。県内の国道4号線で酒気帯び運転のトラックが軽乗用車に突っ込んだ事故が起きた。乗っていた19歳の女の子は即死だった。 担当の氏家署は運転手を逮捕せず、遺族に向かって「今日は暑いからビールを飲みたかったんでしょうよ」と信じられない言葉を吐いた。しかも病院の看護師には自慢げに「今日の事故は凄かったんだから」と酷い遺体の状態を得意げに具体的に喋った。そのそばに女の子の両親がいたことにも気づかずに。 両親は怒髪天を衝く勢いで警察の対応に激怒した。しかも自らも脚の骨を折って入院中だったトラックの運転手は、警察にも無断で勝手に退院し、東京都内の病院に転院し、それを氏家署は把握していなかった。 産経新聞の県版で警察の対応を非難するトーンで3回の企画記事を書いた。すると当時のT交通部長が遺族の家に謝りに来ると聞いた。 「車庫で張り込みしても良いですか?」 遺族の快諾を得た僕は車庫の車の陰に隠れて交通部長の来訪を待った。しばらくすると、黒塗りのセダンが滑り込んできた。交通部長の専用車だった。 降りてきたところで「部長!」と声をかけて、シャッターを押した。 「おい、何するんだ。やめろ」 交通部長は激高し、顔を歪めて手を前に突き出した。そのときの様子がカメラに収められた。結局、この滑稽な写真は掲載しなかったが、T部長が相当、僕を逆恨みしていたのは人づてに聞いていた。だからTさんに頼まれたのか、と訊いたのだ。 僕は仲の良い朝日新聞の後輩記者を呼び出して、わざと警察官の前で、 「酷い話だ。社会的に抹殺されそうになったんだ。選挙の開票日だから打ち上げで酒でも飲んだ、と思って狙ったんだろう。おあいにく様、僕は酒を飲まないんだ。下戸だから。朝日で書いてくれよ。言論弾圧だって」 と話しかけたりした。 警部補は「誤解だ。信じてくれ」と繰り返した。女性警察官は「違うって言ってるのに!」と泣き出してしまった。