ガチ中華に増殖しつつある「エンタメ調理家電」の世界
カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです 【画像】「食彩雲南」のテーブルに埋め込まれた石鍋。底に見える金属のポッチから蒸気が出る 「ガチ中華」なる飲食店のジャンルがあります。日本人向けにアレンジされていない、中国人による中国人のための中華料理を出す店です。飛行機に乗らずして本場の味が味わえると、日本人にも人気になっているガチ中華ですが、やはりお客さんの多くは中国人。日本在住なのかインバウンドなのか不明ですが、それも含めて中国にいるような気分になれます。 さて、そんなガチ中華ですが、他の店との差別化なのか、それとも本国での流行なのか、最近はテーブルの上に独特の調理器具を設置する店が目立ってきました。例えば、西葛西にある中華串焼料理「一串人生」。ここは、お店の人に焼いてもらってテーブルに運んできてもらうパターンと、自分で焼くスタイルから選べるのですが、後者で使う調理器が面白かったですね。 下の動画を見てもらえば一目瞭然ですが、金属製の串に歯車がついており、細かい溝が彫られたバーが左右に動くことで串が勝手に回転します。機械好きな人には、「ラック・アンド・ピニオン」といえば伝わるでしょうか。バーは両側にあるので、テーブルのどちら側からも串が置け、取れます。まんべんなく火が通るでしょうし、純粋に見ていて楽しいです。 また、別の日に訪れたのは「食彩雲南」湯島店(四谷や池袋にもお店あり)。この店の名物が「蒸気石鍋魚」で、雲南料理というくくりではありますが、上海でもトレンドになっているそうです。 「蒸気石鍋魚」のコースを選ぶと、大きな石鍋が埋め込まれたテーブルに案内されます。この石鍋、底に金属のポッチがあって、ちょっと洗面台みたいです。調理前に店員さんがテーブル横のボタンを操作すると、蒸気が勢いよく立ち上ります。鍋の消毒のためなのか、単なるパフォーマンスなのか、その両方なのか分かりませんが、エンタメ性はかなりあります。隣の中国人のお客さんも歓声を上げていました。 そして魚などの具材を入れ、笠のようなものをかぶせて蒸し焼きにしていきます。笠の一部には穴が空いており、そこから蒸気があふれ出ます。肝心のお味は、スープは麻辣火鍋のように大量の油を使わず、辛さもマイルドで優しい味、かつガチ中華ならではの個性も感じられました。 ガチ中華は、本場の味というだけでなく、テーブルでのギミックも楽しめる世界です。世界の工場となった彼の地では、こうした新規性のある調理器具がこれからも登場していくのでしょう。日本の家電メーカーも家庭用として真似できる要素があるのではないでしょうか。これまでの関係性からして、パクったと怒られることはないですよ(たぶん)。
家電 Watch,小口 覺