9億円の潜水機は忽然と消えた…、「エンデュアランス号発見」の知られざる舞台裏
「今日はいい日になるよ。この足元に船がある気がする」
2022年3月5日。それまでに捜索範囲の81%を探査し終えていたが、思わせぶりな船の円材と石炭の塊がいくつか見つかっただけだった。諦めの空気が漂い始めた。 バンサンは船室で、難破船はまだ見つかっていないという状況報告書を書いていた。しかし、シアーズはバウンドに向かってこう言った。「メンスン、今日はいい日になるよ。この足元に船がある気がする」 午後4時を少し過ぎた頃、バンサンに無線連絡が入った。ソナーに反応があったという。それもかなり大きな反応だ。 バンサンは管制用コンテナが設置されている後部甲板に駆けつけた。潜水機のバッテリーは残り少なくなっていたが、それでもオペレーターは高周波のソナーを作動させ、より詳細な画像を作成した。 モニターに表示された画像は衝撃だったと、バンサンは振り返る。船のマストと上部甲板が見えたのだ。 ※ナショナル ジオグラフィック日本版2025年1月号特集「“エンデュアランス号発見”、氷海に沈んだ南極探検船を探して」より抜粋。
文=ジョエル・K・ボーン・ジュニア