ハーバードとMITの専門家が創設、「がん検査」を変えるスタートアップ
毎年3万5000人以上の米国人が多発性骨髄腫と呼ばれる血液のがんと診断されている。しかし、その診断は容易ではなく、医師はいまだに数十年前に開発された骨髄検査のような痛みを伴う侵襲的検査に頼っている。 マサチューセッツ州ボストンを拠点とするPredicta Biosciences(プレディクタ・バイオサイエンシズ)は、痛みを伴わない非侵襲血液検査を患者に提供することで、この状況を変えたいと考えている。同社は、この技術によって多発性骨髄腫の正確な診断とモニタリングが可能となり、医師による治療計画を支援できると主張している。 プレディクタは米国時間7月16日、The Engine Venturesが主導し、Illumina VenturesやTime Boost Capital、米国がん協会のベンチャーキャピタル部門であるブライトエッジ、オエトゲン一族が追加出資したシードラウンドで、当初の目標額を上回る520万ドル(約8億1000万円)を調達したと発表した。同社は、この資金を最初の製品の開発と商業化に充当する。 プレディクタの主力製品であるGenoPredictaは、患者から血液サンプルを採取し、DNAシーケンサーを用いて解析する。そして、多発性骨髄腫の腫瘍に特異的なDNAを探し、この疾患を発症しているかを判断する。この製品は、他の遺伝子マーカーも探し、医師が最適な治療計画を判断する手助けをする。 「ベッドにおける患者ケアでできることと、研究室でできることの差はあまりにも大きかった」とプレディクタの共同創業者であるアイリーン・ゴブリアルは話す。彼女は、研究室で開発したサイエンスを医療現場に持ち込み、治療と生存率を改善させることを目指している。 ダナ・ファーバーがん研究所の血液がん早期発見・阻止センターで責任者を務めるゴブリアルは昨年、ハーバード大学医学部とマサチューセッツ工科大学(MIT)のがん専門家のチームと共にプレディクタを設立した。医師であり科学者でもあるゴブリアルは、研究で利用できる技術と、患者を治療するためのツールとのギャップを埋めたいという思いから起業を思い立ったという。 プレディクタは今年初め、米国がん協会のブライトエッジ・アントレプレナー・プログラムの第1期生に選ばれた。このプログラムは、メンターシップと投資を通じてバイオテクノロジーの起業家を支援することを目的としている。ブライトエッジのマネージング・ディレクターであるアリス・ポンポニオによると、プレディクタが精密腫瘍学を診断に取り入れ、がん治療における重要なギャップの解決に取り組んでいることが同社を選出する決め手になったという。