イベリコ豚の味を広めたい 専門店運営する若き社長の生き方
「新たな可能性を求め父と外国へ行きました」──。大阪市西成区にある「タイシコーポレーション」社長の山本真三さん(37)は今から19年前、食肉卸の会社を経営していた先代社長の父と新たな食肉の可能性を求めヨーロッパへ行き「イベリコ豚」の味に魅せられた。そして「この味を広めたい」と、今では大阪と東京でイベリコ豚専門店を複数運営するまでになった。しかし、ここまで至るには平坦な道のりではなかった。 海外進出も・大阪名物串カツ発祥の店「だるま」 ── あの名物看板社長に聞く成功の秘訣
新たな食肉の可能性求め父とスペインへ
山本さんは学生だった1999年に先代社長である父とヨーロッパへ赴いた。当時、日本では「狂牛病」の発生で牛肉がまったく売れず、父親の会社もその影響を受けていた。 そこで、新たな可能性を求め、父とたどりついたのが、スペイン・アンダルシア州、ポルトガルとの国境付近にある小さな村「ハブーゴ村」だった。 「僕はその時学生でした。フランス、イタリア、ドイツなどを巡って、最後はスペイン。世界最高の生ハムがあると聞いてたどり着いたのがハブーゴ村でした」 さっそく、ハブーゴ村でイベリコ豚を食してみると、それまで持っていた豚肉の概念を塗り替えるほどの衝撃を受けた。「脂もぜんぜん違うし、すごくおいしくて。これはなんとか輸入したいと思いました」と当時を振り返る。
粘り強い交渉でようやく輸入の許可を得た
しかし、当時のスペインと日本は、食肉の輸出入ができない状態だった。そこで、社長だった父と何度も日本、スペインの関係各所へ輸入に向けての粘り強いと交渉を重ねた。そして初交渉から5年たった2003年、ようやく輸入の許可が下りた。 やがて現地に直営牧場を持ち、コルク樫の樹齢200年以上の栄養価が豊富などんぐりを食べて育った最上級の品種「レアル・ベジョータ」を輸入しているという。 当初は「イベリコ豚」が知られておらず苦労した。しかし、イベリコ豚の専門店「IBERICO-YA」を開店し、生ハムセラーを作って飾り、目の前で切るサービスや熟成生ハムのキープも行い、店の名は広まっていった。現在では大阪に心斎橋店(本店)と北新地店、東京に六本木店、西武渋谷店の4店舗を展開するまでに至った。
本物のイベリコ豚を広める
「本物のイベリコ豚を広めるのが僕らの企業ミッション」と語る山本さん。しかし「当社のメインビジネスは通販で、店舗はあくまでアンテナショップなんです。お店では時間がかかり過ぎますが、通販は全国展開ができますから」と笑顔で語る。 ともにハブーゴ村へ行った父は2011年に他界。「ハブーゴ村には父のお墓があります。輸入解禁に尽力し、日本とスペインの架け橋となった父を偲んで、村の人々が建ててくれたものです」。山本さんは、父との思いを胸に、きょうも元気にイベリコ豚を広めることに尽力する。 (文責/フリーライター・北代靖典)