「先生、家に帰りたい…」自宅での最期を望む患者、〝在宅医療〟を叶えるかりゆし姿の医師
詐欺業者も撃退!生活に寄り添う日々
在宅医療をはじめて5年、患者は増え続けている。福井医師は、 「在宅医療は、病気だけでなく、人や暮らしを診る医療です。」 と表現する。診察に訪れた家で、高齢者に詐欺行為を働こうとする人を追い出したのは、1度や2度ではない。高価な宝石を騙されて買いそうになる認知症のおばあちゃんを説得したこともある。患者の日常のトラブルに向き合い、寄り添うのも在宅医療ならではだ。在宅医療は患者の生活空間に入っていく医療だ。超高齢社会の中で、人を見守る頼もしい存在といえる。 一方で、人生の最期に寄り添う医師の存在は、患者の逝き方も変えている。余命宣告されてから好きな旅行を家族と楽しんだ人、大好きな自宅の庭を見つめながら亡くなった人、幸せに悔いなく旅立つ人を多く診てきた。自分らしい最期を自宅で迎えたいという要望にできる限り応え、自宅でできる医療を施す。点滴をするために、家にある洗濯用のツッパリ棒を活用したこともある。オリジナルの工夫は、「自宅では無理」を「自宅でもできる医療」に変えている。
自分らしい最期を支える 医師が感じた「役目」
福井医師は、今、広島市民病院から研修医を迎え入れている。昨年度は5人の研修医が、それぞれ1ヵ月間を福井医師のもとで過ごした。研修を終えた 1 人は、「在宅医療は、自分らしく過ごす日々を支える医療だ」と表現した。普段は総合病院で最先端の医療を学ぶ研修医たちにとって、在宅医療の研修は「患者の生活」を知る機会にもなっていた。 福井医師は、この機会を将来の種まきだと考えている。これから総合病院でたくさんの経験を積むであろう研修医たちが、十数年後でいいから、在宅医療と向き合ったこの経験を思い出し、訪問診療医として活躍してほしい。自分がそうであったように。そんな願いを込めて、今年度も新たに 8 人の医師を受け入れる予定だ。 ※この記事はテレビ新広島と Yahoo!ニュースによる共同連携企画です。
テレビ新広島 石井百恵