【時視各角】弾劾訴追案85票の反対票=韓国
大統領弾劾案が可決した14日、20代の娘は好きなアイドルグループの応援棒(ペンライト)を持ってソウル汝矣島(ヨイド)国会前に行った。親しい友人の中で弾劾集会に行かなかった人はいないと話した。45年ぶりの超現実的な非常戒厳。民主主義と憲法秩序を蹂躪した大統領をこれ以上は認められないという国民的な怒りが多彩な応援棒とK-POPと交わって愉快な政治連帯の場となった。 「賛成204票、反対85票」。全国の広場で歓呼の声が響いた。与党議員12人が党論に背いて賛成票を投じた結果だった。汝矣島では少女時代の「また巡り逢えた世界」が流れた。8年前の朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾デモに火をつけた梨花女子大デモ現場で初めて歌われたその曲だ。今回のデモには10代から20代、30代にいたるまで若い女性たちの参加が目立った。大邱(テグ)の集会では「我々は保守の票田でない。TK(大邱・慶尚北道)のコンクリートはTKの娘たちによって壊される」と大字報が貼り出された。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府の「アンチフェミニズム」基調が20代、30代の女性を広場に呼んだという診断があった。 弾劾案可決後にテレビカメラの前に立った大統領は淡々とした語調で、これまでの業務を自画自賛した後、「きつくても幸せだった旅程をしばらくストップする。決してあきらめない」という奇怪な談話を発表した。失敗した大統領の悲痛や国民への謝罪、痛烈な反省は見られなかった。依然として非正常的な思考だった。 極右ユーチューバーの「不正選挙陰謀説」などに因われて自害的暴走劇をした張本人は平然としていて、実際、涙ぐみながら話したのは「弾劾賛成1人デモ」をした与党新人の金相旭(キム・サンウク)議員(蔚山)だった。金議員は「自分が作った大統領を自分の手で引き下ろした。誰よりも憲法秩序を守る保守の価値を大統領が破った。国民に申し訳ない。健康な保守を作れるよう応援してほしい」とインタビューで語った。 一方、国民の力議員の絶対多数の85人は国民の75%が賛成する弾劾に反対した。言葉では弾劾反対は戒厳擁護でなく弾劾後の混乱状況を憂慮するものだといったが、3日夜の緊迫した戒厳解除決議の瞬間にも18人の与党議員だけが参加したのを国民は見守った。「親尹派重鎮」の尹相炫(ユン・サンヒョン)議員は「非常戒厳は統治行為であり、国民は1年過ぎれば忘れてまた投票するので大統領に対する義理を守ろう」と語った。尹議員は金相旭議員のデモを引き止めながらも「絶対に政権を渡すことができないため」と話したが、それなら最初から政権を渡すのではなく大統領をうまく導くべきではなかったのか。「8年ぶり弾劾」という事態も、過去の弾劾で「裏切り者フレーム」以外に特に得たものがなく刷新できなかった結果であろう。もちろんこの際、帝王的大統領制の限界と敵対的陣営政治の克服のための根本的な議論も必要だ。 大きな票差で元祖親尹派を新任の院内代表に座らせた国民の力はもう韓東勲(ハン・ドンフン)党代表の追放に進む姿だ。戒厳解除決議、弾劾案可決を導いて最悪の状況を免れるようにした韓代表までも追い出せば、国民の力の未来はどうなるのか。関係者の言葉通り「党員の20-30%は『不正選挙論』を信じて」保守層の50%、国民の力支持者の66%が弾劾に反対するというそれぞれの事情はあるだろう(ギャラップ調査、保守層46%が弾劾賛成)。しかし支持者に巻き込まれて国民の大多数の同意を得られず特定の地域・世代基盤に幅を狭めたまま議員一人一人の安危だけを狙えば、その選択に対する後日の問題も負わなければならない。 ある民主党パネルはラジオ放送で「国民の力は支持率最大15-20%の極右政党を目指すということなのか。もう大衆政党、政権政党の姿は見られない」と論評した。中央大のキム・ヌリ教授は「民主党は進歩でなく保守、国民の力は守旧」と診断したことがあるが、この言葉通りに再配置される過程なのか。我々の政治で伝統的な進歩・保守の枠組みが崩れて久しいが、「李在明(イ・ジェミョン)私党」という批判を受ける民主党を真の進歩政党といえないのに、国民の力も健全な保守政党になることを放棄すればこれ以上の悲劇はない。 ヤン・ソンヒ/中央日報コラムニスト