【公演レポート】北尾亘・福原冠と参加者17名が三重で大奮闘「みんながさんぴんだ!」
「さんぴんの演劇創作ワークショップ、からの大発表会!!」が去る10月6日に三重・三重県文化会館 小ホールで行われた。 【画像】「さんぴんの演劇創作ワークショップ、からの大発表会!!」より。(撮影:中瀬俊介)(他10件) さんぴんは、ロロの板橋駿谷、Baobabの北尾亘、柿喰う客の永島敬三、範宙遊泳の福原冠による、4人の俳優とダンサーによって結成された旅芸人チーム。“君の人生の断編は、誰かの人生の本編だ”をキーワードに、日本各地に滞在し、そこで出会った人たちにインタビューを実施。そのインタビューから人生のエピソードをもとにした台本を立ち上げ、舞台にしている。 今回は北尾と福原が三重へ赴き、演劇初心者、市民演劇経験者、シニアや介護関係者たちで構成された老いのプレーパークのメンバーなど、17歳から八十代まで、17名の参加者が1週間におよぶワークショップとクリエーションを実施。6日は、その成果を“大発表会”として披露した。 会場は紅白幕と赤い提灯の装飾が施され、いかにも“祭り”の雰囲気。舞台は対面式で、開場中も出演者たちが舞台上を歩き回って、観客に話しかけたり、セリフや動きの確認をしたりと和やかな雰囲気を作り出した。開演時間になると、北尾と福原があいさつ。さんぴんの作品の作り方や今回のクリエーションについて説明したあと、長いござをザーッと広げて芝居がスタートした。 劇中では16のエピソードが展開。宿題をめぐる親子のやり取り、過去に人から言われて印象的だった言葉、子供時代の記憶から定年後の“今”につながる物語、忘れがたい家族の記憶や学生時代の体験、祖母との関係性の変遷、記憶に刻まれた懐かしい風景など、誰かの胸にしまわれていたさまざまなエピソードが、次々と繰り広げられた。 印象的だったのは、演じ手それぞれが実に思い切りよく役を演じきっていたこと。セリフ量も動きも多く、展開も早いが、演じ手たちは役をくるくると変えながら、それぞれのシーンを刻み込んでいく。また北尾と福原は、時折役を担うものの、基本的には舞台の端で音響や照明の作業に徹し、参加者たちの奮闘ぶりを穏やかな表情で見守っていた。 あっという間の1時間10分で、最後は北尾が太鼓を叩き、福原が歌い、出演者が全員舞台上に現れての乱舞。彼らが飛んだり跳ねたりと思い思いに踊る様に、観客も大きな拍手で応えた。そして銀の紙吹雪が舞う中、北尾が「みんながさんぴんだー!」と叫び、大盛況のうちに舞台は終演した。 なおロビーにはこの1週間の軌跡をまとめた大きな紙が張り出され、ワークショップの様子やインタビュー時のメモ、今回は使用されなかった台本などが展示されていた。その展示からも、限られた時間の中、濃密な創作が行われたことが伝わってきた。 ■ さんぴんの演劇創作ワークショップ、からの大発表会!! 2024年10月6日(日) ※公演終了 三重県 三重県文化会館 小ホール □ スタッフ 作・演出:北尾亘 / 福原冠 / ワークショップ参加者 □ 出演 北尾亘 / 福原冠 / ワークショップ参加者