米前財務長官、トランプ次期政権への参加目指さないと表明 制裁強化などで助言の用意
David Lawder [ワシントン 10日 ロイター] - トランプ前政権下で財務長官を務めたスティーブン・ムニューシン氏がロイターのインタビューに応じ、トランプ次期政権への参加を目指す考えはないことを明らかにした。一方、イランとロシアへの制裁強化や、米債務増加の抑制などを次期財務相に助言する用意があると語った。 ムニューシン氏は、財務省が米国の通商政策の強化に取り組むことが重要だと表明。これにはトランプ氏が大統領在任中の2020年1月に発表した中国との「第1段階」貿易協定が未達に終わったのを受け、約束した米国製品の購入を中国に守らせることも含まれる。 ムニューシンは2018年と19年の中国との貿易交渉のように、財務省と商務省、通商代表部、国家経済会議(NEC)といった経済チーム全体がグループとして緊密に連携することが重要だと指摘した。 米金融大手ゴールドマン・サックスの元幹部のムニューシンは、財務長官には金融市場での経験に加え、強力な管理職を務めた経歴も重要になると訴えた。財務省は規制や税制政策から国際的な制裁に至るまで経済の広大な分野にまたがり、議論にかなりの時間を費やすことを理由に挙げた。 ムニューシン氏は、米国が金融制裁の執行を強化し、イランとロシアが石油で収入を得ることを断つための行動を増やす必要があると言及。ウクライナに侵攻したロシアへの制裁は、効果的だったというより「ヘッドライン」だったと批判した。 主要7カ国(G7)が課したロシア産原油の1バレル当たり60ドルの価格上限はロシアの石油収入を減らしている可能性はあるものの、「ロシアはたくさんの石油とガスを売っている」として効果は限られるとの見方を示した。 トランプ氏が来年で期限切れを迎える所得税減税を延長し、チップや社会保障費、超過勤務手当への課税を廃止する方針を示しているのに関し、これらを実施すれば米債務の膨張が懸念されるのではないかとの質問に対し、ムニューシン氏は増大する財政赤字を抑制する必要があるとの考えを示した。 ムニューシン氏は、議会とトランプ次期政権は所得税減税の延長と、裁量的支出や非裁量的支出の削減との間でバランスを取ることができると確信していると表明。歳入の一部は、経済成長の拡大と輸入品に対する関税引き上げで補填されるとも話した。 一方、ムニューシンはトランプ前政権が実施した新型コロナウイルス関連の多額の支出は「必要だったと考えている。そうでなければ不況ではなく、世界的な恐慌になっていただろう」とした一方、「バイデン政権が支出を続けたことは明らかにインフレを引き起こし、大きな赤字を生み出しており、対応が必要だ」と訴えた。 ムニューシンはトランプ次期政権で考えられる財務相候補の名前を挙げることは避けた。 ロイターは8日、財務相の最有力候補としてキー・スクエア・グループ創業者のスコット・ベッセント氏と著名ヘッジファンドマネジャーのジョン・ポールソン氏が浮上し、ベッセント氏がトランプ氏と面会したと報じた。 ムニューシンは財務相退任後にソフトバンクグループとアラブ首長国連邦(UAE)アブダビの政府系ファンド、ムバダラ・インベストメントから投資を受けてプライベートエクイティ(PE)ファンドのリバティー・ストラテジック・キャピタルを設立した。