【レジェンドインタビュー】大野豊(元広島) なぜ左投げは野球で有利なのか「同じ左の江夏さんに師事した時代」
最近の左投手はシュート系を投げない
大野が若手だった1979年の写真。まだ江夏豊に師事しながら投手として必要なことを学んで試行錯誤していたころだ[左は古葉竹識監督、右は衣笠祥雄]
【プロ野球90年特集 魅惑のサウスポー】 先発、リリーフの両方で活躍し、左投手としては江夏豊、山本和行に次ぐ3人目の「100勝&100セーブ」(右では斉藤明夫、郭源治、佐々岡真司も)の記録保持者である大野豊氏に左の利点、そして自身が左投げだったことについて語ってもらった。 取材・構成=落合修一 写真=BBM ──特集のテーマは「左投手」です。 大野 僕は、出雲市信用組合の軟式野球部で3年間過ごし、1977年春の呉キャンプでカープの入団テストを受けました。当時のスカウト部長の木庭教さんから「カープはお前を獲る。安定した信用組合の仕事を捨て、不安定なプロ野球の世界に飛び込むことになるが、本当にいいのか」と確認されましたが、僕にとっては願ってもないことでした。当時のカープは左投手が少なかったので、「面白い左がいる」というのが獲得を決めた理由だったとあとで聞きました。左だったからプロになれたのは確かです。 ── 一般的に左投手は制球が悪いとか、荒れ球とか昔から言われています。根拠があるのでしょうか。 大野 言われていますね。なぜですかね。人間の心臓は体の左側で動くからと聞いたことがありますが、たぶんそれも俗説です。最近はコントロールが良い左投手はたくさんいますよ。制球力の良しあしは個人の能力によるもので、右でも悪い投手はいますし、左でも良い投手はいます。左投手は絶対数が少ないからコントロールの悪い投手が目立ってしまうのではないでしょうか。僕も若いころはコントロールが悪かったんです。 ──ベテランになってからはコントロールが良いイメージしかないです。 大野 自分のフォームを固めていけば、自然とコントロールは付いてくるんですよ。若いときはどうしてもリリースポイントやフォームにバラつきがあったり、メンタル的なところが不安定だったりするので。 ──これも昔からよく言われますが、左投手の球速140キロは打者にとって右投手の150キロに見えるとか。 大野 言われますね。これもどうなのでしょうね。ただ、今は左右関係なく速いボールを投げる投手が増えているじゃないですか。昔は速いボールを投げる投手が少なかったから、そう言われたんじゃないですか。以前は左投手が左打者を抑えるのが当たり前と言われていましたが、最近は左投手をまったく苦にしない左打者が増えました。打者の技術が上がり、左投手への対応ができるようになったのです。当たり前だったことが当たり前ではない時代になりましたよね。ただ、同じスピードでも右投手が投げるよりも左投手が投げるほうが速く感じることは、あると思います。対戦経験が少ないから。 ──やはりそうですか。 大野 僕ら左投手は、右打者より左打者と対するほうが有利と言われていますが、意外と右打者のほうが投げやすいんですよ。 ──なぜですか。 大野 球種の問題です。左投手は右打者の外角へチェンジアップや落ちるボールを自由にコントロールできれば、楽なんです。最近は左投手が左打者の内角にあまり投げず、外へのスライダー系のボールで勝負することが増えましたが・・・
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週刊ベースボール