世界の七不思議「オリンピアのゼウス像」とは、神々の原型となった金と象牙の巨大座像
右手に勝利の女神ニケを載せ、左手には杖 ナポレオンやジョージ・ワシントンにも影響
古代ギリシャの都市国家エリスに位置するオリンピアの聖域には、ゼウス神殿があり、かつては金の衣をまとった巨大なゼウス像が祭られていた。ゼウス像は壮麗な玉座に腰かけていたにもかかわらず、高さは約12メートルもあったという。紀元前1世紀の地理学者ストラボンは、「ゼウスが立ち上がれば、頭が神殿の屋根を突き抜けてしまうほどの大きさ」だと記している。 ギャラリー:同じポーズのナポレオンほか、「オリンピアのゼウス像」 写真と画像19点 職人の技は驚くほど精緻で、複雑な彫刻や装飾が施され、目には貴重な宝石が使われていた。この像は紀元前225年には、ビザンティウムの数学者フィロンやシドンの作家アンティパトロスなどにより、「世界の七不思議」の1つと呼ばれていた。この七不思議のリストには、他にはギザの大ピラミッド、バビロンの空中庭園、アレクサンドリアの大灯台、マウソロス霊廟などが挙げられていた。
オリンピック発祥の地
ゼウス像が建設されるよりもずっと前の紀元前776年、オリンピアで最高神ゼウスに奉納するための競技会が始まった。古代オリンピックだ。以来4年に1度ずつ、ギリシャ全土の都市国家から競技者と観客がオリンピアに集まるようになり、戦争中の国々も戦いを休止し、平和的な競技によって神々を称えた。 やがて、エリスと、隣接する都市国家ピサとがオリンピックの開催権をめぐって互いに激しく争うようになった。だが、エリスは紀元前464年にピサを滅ぼして開催権を確保し、戦利品を使ってゼウスを祭る壮大な神殿の建設に着手する。 神殿の建設を任されたのは地元の建築家リボンだった。彼が建てた巨大なドーリア式神殿の正面には6本、側面には13本の円柱が並んでいた。中央の身廊(入り口から祭壇前までの中央部分)を取り囲むように2階があり、正面扉の両側から階段で上ることができた。 ギリシャの神話や伝承の人物を描いた見事な彫刻が神殿を飾っていた。その多くは現存し、アテネの国立考古学博物館に展示されている。しかし、一番の傑作は神殿の内部にあった。