ホンダ・日産の統合実現は時間との勝負 求められる「効果」明示、成就しない可能性も
ホンダと日産自動車は23日、経営統合の協議入りを決めた。記者会見したホンダの三部敏宏社長と日産の内田誠社長は互いの強みを生かす未来志向の統合だとし「日産の救済ではない」と強調した。業績が悪化した日産は収益力回復を、ホンダは株主に統合効果の具体像をそれぞれ2025年6月の統合の最終契約期限までに示す必要があり、国内自動車産業の名門同士の統合の実現は時間との勝負になる。 「自立した会社として成り立たなければ統合は成就しない。成就しない可能性もゼロではない」 協議を主導するホンダの三部氏からは慎重な発言が漏れた。 業績悪化による株価低迷で、日産の市場価値を示す時価総額は縮小している。23日の終値ベースではホンダの約6兆7399億円に対し、日産は4分の1の約1兆6712億円。統合で発足する共同持ち株会社のトップをホンダが指名するのは資本の論理で当然だ。だが、これだけの価値の格差がある中での統合は、救済を否定してもホンダの株主や従業員に疑問や不満が残るとみられる。 三部氏も内田氏も、統合は日産が収益力を改善する構造改革「ターンアラウンド」を着実に実行することを前提としているが、最終契約までの限られた時間で、日産が収益力を回復させ、かつホンダがその継続性を確信を持って判断できるだけの材料を示すことは決して容易ではない。 内田氏は統合後の両社の関係を「上でもない、下でもない」と述べ、日産はあくまで対等のブランドとして残ると説明した。もっとも業績悪化を繰り返した経営体質から決別できなければ対等な関係は絵に描いた餅だ。 一方、三部氏は、今回の統合は「2030年前後を見据えている」としたものの、最終契約後も26年4月に予定される統合を決議する臨時株主総会では、技術補完や部品共通化などステークホルダー(利害関係者)にとって分かりやすい統合効果の説明が厳しく求められる。(池田昇)