中嶋朋子「自分の声音の限界」に気づいてからの挑戦と坂東玉三郎が広げた世界
── 流れて届く、演劇や朗読みたいに全力で伝える感じとは違いますね。そもそも、音楽と朗読ってどうやってあわせるのですか?音楽が入ると何が変わるのでしょうか? 中嶋さん:とにかくあわせてやってみよう、という感じです。あわせてみて違えば、チューニングすればいい。 音楽の人たちと共演すると、自分では語れない人間の生体リズムが表現にのるのが、とても面白いんです。声だけだとその人の特性があるので、たとえば、私が軽くしゃべっていても私の特性で湿度がのって、難しく聞こえたりするんです。
それを演技力でなんとかしようとするのですが、とてもフラストレーションを感じます。私の声を通すと、伝えたいことが伝わらない!って。思った通りの音が出ない!楽器が違う!と感じます。 ── 中嶋さんにとっては、声も楽器なんですね! 中嶋さん:いろんな音色、いろんな楽器で一緒に表現すると、多層的なハーモニーになって自分の肉体を超える表現ができます。音楽がすばらしいのはこういうところです。 ── これまで出演された「音楽と朗読劇」は楽器編成も、扱う音楽の分野も本当にバラエティに富んでいます。ご自身の特性を研究された結果でしょうか。
中嶋さん:自分がもっているものや特性によって、イメージが決まってしまう不自由さに気がついたのが大きかったですね。 そこから、「どうしたらいいんだろう」とずっといろんなことを考えてきたから、いろんなことをやりはじめました。音楽と出会って、新しい扉が開きましたね。
■朗読劇をプロデュース「観る人の固定観念を崩したい」 ── 今回、朗読劇『カミサマノ本棚』をプロデュース、そして出演されますが、どんな思いで作りはじめたのですか?
中嶋さん:観てくださる方々の中の固定観念を一度崩して、新しいものを味わっていただきたいという思いが根底にありました。 朗読劇に関して、「本読むだけでしょ?」「その本読んだことあるよ!」などと言われるんですが、「いやいや、朗読劇が一番難しいんだから!」って(笑)。 朗読劇は、“言葉を読む・届ける”という行為だけで、演者と観客がイマジネーション(想像力)を互いにふくらませ、共有しながら劇空間を創っていくものなんです。