中嶋朋子「自分の声音の限界」に気づいてからの挑戦と坂東玉三郎が広げた世界
イマジネーションを共有するとは、見えざる感覚だけの世界。だからこそ難しいんですよね。私たち届ける側からの一方通行では、成立しません。お客様に、能動的に想像の世界で遊んでもらわなければならないのです。 この意味では、今回の朗読劇は挑戦かもしれませんが、演劇にしても観ない人は観ません。そうではなくて、思わず観たくなるような、いままでの枠組みに入らないものを作らなければと思ったんです。 ── 観客も想像力を駆使して、ともに作品の世界に入っていく感じでしょうか。私が今まで朗読劇に抱いていたイメージとはだいぶ違います。今回の『カミサマノ本棚』というタイトルの由来は?
中嶋さん:私たちが出会うすべての言葉に、人生のヒントや答えが含まれていることってありませんか?それは街で見かけた看板やチラシ、詩人の言葉かもしれません。 こんなふうに、自分たちにふりかかってくる言葉はすべて“ギフト”だと考えたらどうでしょう。辛辣な言葉をかけられたり、傷ついたりしてもそこに発見があれば、“ギフト”になります。 世の中にある言葉は、誰かが用意した私たちへの“ギフト”の本棚だとしたら…その意味で『カミサマノ本棚』とタイトルをつけました。
映画や音楽からも自分しか持ち帰れないギフトがある。受けとるものをそんなふうにとらえていただければ、毎日が少しずつ良くなるのでは、という私からの提案なんです。 事前に参加者の方と言葉選びのワークショップを行って、自分がちょっと嬉しくなる言葉を集めて舞台に使う予定です(※編集部注=イベントは終了)。 ── 偶然出会ったひと言が心に残り、気持ちを前向きにさせてくれることもありますものね。 中嶋さん:そうそう、出会いはなんでもいいんですよ。心に残る言葉って、難しく考えなくていいと思います。皆さん、ついかまえてしまいがちで、読書なら「ドストエフスキーを読まなきゃ」なんて、そんなのどうでもいいんです。