〈中野・劇団員殺人事件〉「絶対に犯人を見つけてやる」ある日突然、恋人を殺された男性“決意と奔走の200日”
捜査は難航、真偽不明の報道も
マスコミまでアテにできないなら、自分がやるしかない。理沙を殺した犯人を必ず見つけてやる。泰蔵が、さらに自分で何とかしなければと思ったのは、難航する捜査に呼応するかのごとく、主に警察発表をネタにしていたマスコミ報道もめっきり減ってしまったからだ。 どころか、独自にネタを仕入れるのは相当に無理があったようで、事件がDV彼氏と酒癖が悪い女性によるトラブルの果てに起こったかのごとくミスリードするメディアまで現れる。 一部を新聞記事より引用したい。 7月上旬頃には、自宅近くの公園で、加賀谷さんとみられる女性が男性と口論になり、女性が泣く様子を近隣住人が目撃していた(2015年9月10日産経新聞) 裏取りもせぬまま、さらに詳しく報じるメディアもあった。『アサ芸プラス』の記事である。 (男が)「おまえと飲むと、いっつもこうだよな」と言い、女性が持っていた携帯電話を急に取り上げました。女性が「何すんのよ。やめてよ、返して。そういうこと、やめてよ」と騒ぎだすと、男は「うるせぇよ』と彼女を小突いたんです。 女性は「痛い。やめてよ」と泣き叫びながら抵抗し、「あなたのことは宮城の親も知っているんだからね」と言い放ったという。近隣住民が続けて証言する。 「泣きじゃくる彼女に男は『リサ、俺の話を聞いてくれよ』と何度も呼びかけていましたが、女性は走って逃げようとする。そのたびに男が彼女の腕をつかんで止めるんです。女性は『痛い。やめてよ!』と怒り、男は『話そうよ、リサ。お願いだから聞いてくれよ』と繰り返していました。 女性は『あなたのことは大好き。一緒に住みたいとも思っている。でも無理なの。私ね、あなたに殺される。あなたが怖いの。無理なの、もう』と悲痛な感じで、男のほうは『何でリサのことを殺さなきゃならないんだよ』と」深夜の口論は2時間近くに及んだ(2015年9月14日) この報道を受けて私は、すぐに裏取り取材を開始した。口論があったとされる公園は住宅街の一角にあり、証言者の住むマンションだけでも50世帯を超えた。恐らく一連の記事はアマい取材の上で報じられたのだろう。わずか1時間ほどで「オカシイ」と気づいた。 会話が聞き取れるぐらいの大声で2時間も話していれば周囲にも漏れ伝わってもよさそうなものなのに、耳にした住民が全くいないのである。これは誤報じゃないのか。ならば改めて記事に出ていた証言者に確認してみよう。本当に理沙と元彼との会話だったのか。