兵庫県知事選の “SNS戦” を助長した、米大統領選と同じ「sanewashing」
オーストラリア政府が子供のSNS利用を禁止するというが、デマや陰謀論が渦巻くデジタル空間の影響をより強く受けているのは、大人のほうかもしれない。それは米大統領選や兵庫県知事選の結果からもわかるだろう。 【画像】兵庫県知事選の “SNS戦” を助長した、米大統領選と同じ「sanewashing」 選挙におけるSNSの影響力と、それを助長した日本のマスコミの「チグハグな選挙報道」について、元NHK解説主幹でジャーナリストの池畑修平氏が考察する。
「端末から離れた子供たちを見たい」
11月21日、オーストラリア政府は16歳未満の子供がSNSを利用することを禁止する法案を議会に提出した。デジタル空間での性的被害やいじめなどを食い止めることが目的だ。 違反した子供や保護者を処罰するのではなく、SNSを運営するプラットフォーム企業に16歳未満のアクセスを止めるための措置を求めるもので、対応しない企業には最大で4950万豪ドル(約50億円)の罰金を科す。最大野党も賛成の立場なので成立する公算が高く、世界で初めての法律になるという。 この法案の趣旨を説明する動画のなかで、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は、こう述べた。 “I want to see kids off their devices and onto the footy fields and the swimming pools and the tennis courts” 「端末から離れて、フットボールのフィールドやプール、テニスコートにいる子供たちを見たい」 早くからスマートフォンを持ち、一日何時間もSNSの世界に浸る子供は、オーストラリアに限らず、いまやほとんどの国で珍しくない。そして、SNSを舞台にしたいじめや、性的な被害につながるトラブルも珍しくない。そうした国際的な懸念に、法律で禁止という強制手段に踏み出すことに、アルバニージーは健康的に遊びまわる子供たちの姿を強調することで国民に理解を求めたわけだ。 規制の対象は、X、TikTok、インスタグラムなどが想定されている。YouTubeは教育的な要素があるとみなされて対象外になる。 こうした動きには、識者から異論も出ている。措置の実効性に対する疑問符をはじめ、子供たちが規制の対象に含まれない「より低質の」SNSへと流れてしまう恐れ、それに彼らの「知る権利」を制限するという批判など。 たしかに、SNSを通じて子供たちが自分の関心分野を探求する可能性が狭まられることは避けられそうにない。それでも、オーストラリア政界は子供のSNS利用はメリットよりデメリットのほうが大きくなったと判断している。 動画のなかで、アルバニージーはこうも述べた。 “We want them to have real experiences with real people because we know that social media is causing social harm” 「私たちはソーシャルメディアがソーシャル(社会的)な害を引き起こしていることを知っているので、子供たちにはリアルな人たちとリアルな体験をしてもらいたい」