18年ぶりに上半期軽トップに返り咲き! スズキが進める販売絶好調の「魔改造戦略」
「小さくて軽いクルマは燃料消費量や二酸化炭素を含めた排出ガスを少なく抑えられ、なおかつ走りも軽快になる。日本市場におけるスズキの平均車両重量は892㎏で、業界平均の1261㎏に比べて断トツに軽い」 ただでさえ軽いのに、今後の10年を見据え、スズキは100㎏の軽量化に挑む。完全に魔改造である。同社の取締役専務役員で技術統括の加藤勝弘氏はさらりとこう言った。 「1部品1gの精神で小さな積み重ねをやっていけば不可能ではない」 鈴木社長はもっと過激だ。 「うちの役員にもよく言うんですけど、リアワイパーって本当に使っていますかと」 クルマのスイッチの数、樹脂(車内の樹脂トリム)パーツなども見直すよう鈴木社長は技術陣に提案したという。 ■実は二輪の販売も絶好調のスズキ 上半期のスズキは二輪も絶好調だったと話すのは、モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏だ。 「売上高と各利益で過去最高業績です。円安効果や販売台数の増加、価格適正化など理由はさまざまですが、二輪の世界最大級の市場であるインド、そして欧州での販売が伸びています」 そんなスズキは、7月に開催された鈴鹿8時間耐久ロードレースにカーボンニュートラル燃料で挑んだ。 「殺人的酷暑の中、8時間という長丁場のレースで8位に食い込む好結果を出したから驚きます! 二輪事業を担当する田中強本部長は『これくらい走れるということは事前にわかっていたが、ここにたどり着くまでに苦労があった』とコメントしています」 実は『魔改造の夜』と同じく、8耐のメンバーはスズキ社内の組織を横断し構成されたチームだった。 「鈴木社長は、『さまざまな部署から集まったメンバーでよくここまでやってくれた』とねぎらいました。データや知見は今後、二輪車だけでなく、四輪車や船外機などにも生かされます」 スズキの二輪人気の秘密について、青木氏は「たくさんあるがひとつ挙げるなら」と前置きした上でこう語る。 「『KATANAミーティング』には、鈴木社長がカタナに乗ってさっそうと現れるのが恒例です。そして来場者と気さくに話して交流する。鈴木社長はイベントの最後まで会場に残り、手を振りながら『お気をつけて』『ありがとうございました』とスタッフと一緒に来場者を見送る。だから、ファンらからスズキは愛され、人気なのです」 取材・文・撮影/週プレ自動車班 撮影/望月浩彦 山本佳吾 夏目健司 写真提供/スズキ二輪