京歩きの達人が指南!「京都で一番早い紅葉」が楽しめる一押しスポットとは
● 三尾から秘密のスポット「岩戸落葉神社」へ 神護寺からの帰路、空海ゆかりの硯石のそばにある茶店「硯石亭」。もみじ餅で有名ですが、ここで販売されている高雄名物「もみじの天婦羅」はいかがでしょう。葉自体はほとんど味のないものですが、衣に甘さを加えているため、かりんとうに似た風味で、サクッとした食感の揚げ菓子という印象。秋の風流を舌でも味わってみてください。 神護寺から槇尾の西明寺と栂尾の高山寺はいずれも徒歩圏内。神護寺の楼門から石段を下り、清滝川沿いを歩いて西明寺まではゆっくり歩いて30分。西明寺から世界遺産の高山寺までは20分ほどです。紅葉巡りと併せて、3カ寺を巡り歩いてもいいでしょう。 三尾を訪れた際、ぜひ足を延ばしたい秘密の場所があります。高山寺から周山街道を北へ10kmほど先、清滝川の上流で北山杉が林立する山あいに岩戸落葉神社(北区)がたたずみます。JR西日本バス「高雄」停留所から「周山」行きで17番目の停留所「小野郷」から徒歩5分ほどです。 静謐な空気が満ちる境内は、平安時代よりも古い歴史があるとか。社の名は『源氏物語』の中で主人公の光源氏の異母兄に当たる朱雀帝の娘「落葉の宮」が、この辺りに暮らしていたことに由来します。こぢんまりとした境内を染め上げるイチョウの大樹が陽の光に照り映えて神々しいほど。真骨頂は11月中ごろ、その名の通り「落葉」にあります。舞い散ったイチョウの葉が黄金色のじゅうたんとなり、赤い鳥居と黄金色の対比が目にも鮮やかでした。
● 『源氏物語』ゆかりの嵯峨野の古刹へ 嵐電「嵐山」駅から駅前通りを北へ15分ほど真っすぐに進むと、風格漂う仁王門(山門)に突き当たります。こちらは浄土宗の清凉寺(右京区)。第52代嵯峨天皇の皇子で、左大臣を務めた源融(みなもとのとおる)の別荘「棲霞観(せいかかん)」を寺に改め「棲霞寺」としたのが始まりで、「嵯峨釈迦堂」として親しまれてきました。 ご本尊の釈迦如来立像は、インドから中国を経て日本へと伝わったことから“三国伝来の釈迦如来”と称されます。昭和中期の調査により、絹製の五臓六腑が胎内に発見されたことから、“生身の釈迦如来”とも。通常非公開でお厨子は閉ざされていますが、春(4・5月)、秋(10・11月)と毎月8日の縁日に御開帳されます。ご本尊を拝めて、紅葉も満喫できる絶好の機会が到来しました! 清凉寺は、大河ドラマ『光る君へ』を機に再び脚光を浴びている世紀の大ベストセラー『源氏物語』ゆかりの地でもあります。紫式部と秘密の恋仲として描かれる藤原道長や一条天皇と中宮定子の皇子・敦康親王など、光源氏のモデルには複数の説があります。清凉寺の起源となった源融もその一人で、境内には源融のお墓が残ります。物語の中で光源氏が建立した「嵯峨の御堂」は、清凉寺の前身であった棲霞寺をイメージしたものと考えられています。 境内南側に立つ法然上人像近くに23年夏、「Bhagavan(葉伽梵/ヴァガバァーン)」というカフェがオープンしました。サンスクリット語で「お釈迦様」という意味。瑠璃光院、慈受院門跡、厭離庵など、近年人気の名庭を再生させてきた嵯峨野出身の作庭家がオーナーで、廃虚と化していた元茶店の建物を和モダンなカフェにリノベーションしました。 お団子やぜんざい、一年中味わえるかき氷など甘味も好評ですが、こちらの最大の魅力はなんといっても窓越しに見える美しい景色です。建物を囲む庭が、庭師たちの手により心地のよい空間となりました。秋空の下、ベンチに座って紅葉を眺めながらゆるりとカフェタイムが楽しめます。店内では、つややかな漆風塗装のテーブルに鏡のように映り込む紅葉も必見ですよ。