3年に一度のアート国際展『横浜トリエンナーレ』で知っておくべき4つのポイント
『第8回横浜トリエンナーレ』がついに開幕! リニューアルオープンを果たした「横浜美術館」をはじめとする会場にも注目しながら、見どころや注目アーティスト作品をレポート。
『横浜トリエンナーレ』とは?
『横浜トリエンナーレ』は、神奈川県横浜市で3年に一度開催される現代アートの国際展。「メガ・ウェイブ―新たな総合に向けて」と題された2001年の第1回展以来、世界の情勢が目まぐるしく変わる時代の中で、世界と日本、社会と個人の関係を見つめ、アートの社会的存在意義を多角的な視点で問い直してきた。
メイン会場は丹下健三建築を大改修した「横浜美術館」
開催される場所も『横浜トリエンナーレ』の見どころのひとつ。メイン会場のひとつとなる「横浜美術館」は、日本におけるモダニズム建築の巨匠、丹下健三(1913-2005)が国内で初めて美術館として設計し、1988年に竣工。2021年からは、老朽化が進んだ施設や設備の長寿命化を図るため、大規模改修工事が行われた。 リニューアルにあたって空間構築などを担当したのは、乾久美子建築設計事務所と菊地敦己。『第8回横浜トリエンナーレ』の開幕とともにリニューアルオープンを果たした美術館では、ガラス張り天井の開閉式ルーバーが改修され、御影石の大空間「グランドギャラリー」をやわらかい自然光が満たす。 このほか、横浜市認定歴史的建造物である「旧第一銀行横浜支店」や、1926年竣工の帝蚕倉庫の一棟を復元した建物に入る「BankART KAIKO」、「アートもりもり!」のプログラムとして、 日本初の海上浮体式ターミナル「ぷかりさん橋(正式名称:みなとみらい桟橋・海上旅客ターミナル)」など個性豊かな会場も楽しみながら、展示を巡りたい。
今年のテーマは「野草」
これまでも国際的に活躍するアーティスティック・ディレクターを招いてきた『横浜トリエンナーレ』。第8回となる今回は、北京を拠点にアーティスト、キュレーターとして活動するリウ・ディンと(写真左)と、北京インサイドアウト美術館ディレクターを務めるキャロル・インホワ・ルー(同右)が選出された。 ふたりが掲げたテーマは、「野草:いま、ここで⽣きてる」。その由来は、中国の⼩説家である魯迅(1881-1936)が中国史の激動期にあたる1924年から1926年にかけて執筆し、自身が直⾯した個⼈と社会の現実を描いた詩集『野草』(1927年刊行)だ。 世界各地で戦争や紛争、衝突が起き、「個人」の存在がふたたび妥協を強いられている今、『第8回横浜トリエンナーレ』では20世紀初頭にさかのぼり、いくつかの歴史的瞬間や思想の動向、その中にいた人物たちに注目。アナーキズム(政治的・社会的権力を否定し、個人の自由と独立を望む考え方)を糧に、現代社会を生きる個人としての私たちと、既存のルールや制度との対話の可能性を探る。そして、アートとそれを取り巻く世界に目を向け、アートが今の私たちに積極的に関わる方法を見出していく。