市の子育て支援サイトがアダルトサイトに繋がった!? オークションにかけられる自治体ドメイン、浸透していない転用防止策
▽検索エンジンで上位になり、アクセス数が稼げるのが利点 なぜ、省庁や自治体が使っていたドメインを欲しがる人がいるのか。 省庁や自治体のドメインに限らず、誰かに使われていた中古のドメインは、第三者が再取得した後も検索エンジンサイトでは誰かが調べたという実績が残る。こうした実績があると、人工知能(AI)が「よく検索されるサイトだ」と判断。新規で取得されたドメインよりも、検索結果の上位に挙げられやすい。 新しくサイトを立ち上げたい人からすると、立ち上げ直後から上位に表示されやすく、アクセス数を稼げるという利点があるのだ。 過去には、秋田県大館市が2020年3月、子育て支援事業のサイトで新たなドメインを取得。委託先がそれまで使用していた古いドメインを手放すと、アダルトサイトに転用された。 三重県が手放した企業支援サイトのものは落札後、カードローンや債務整理について紹介する「アフェリエイト」とみられるサイトに転用されていた。アフェリエイトとは、あらかじめサイトに設置していた広告サイトに、誰かがアクセスしたり、何かを購入したりすると収入を得られる仕組み。違法ではないが、ドメインを作った際に想定していたサイトとはまるで違うものだ。
民間企業では買い戻すケースがある。NTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」のドメインは放棄後にオークションに出品、約400万円で落札された。落札者は明かされていないものの、ドコモは再取得を認めている。 ▽困惑する自治体担当者「まさか出品されるとは」 ドメインが出品されていることについて取材すると、西日本の自治体担当者は「え?状況がよく分からないのですが…」と驚きを隠さなかった。出品の事実を初めて知ったといい、「関係各所に連絡するなど対応を急ぐ」と慌てた様子だった。 他の自治体も「まさか出品されるとは思わなかった」「対処法が分からない」など、取材を受けた担当者は戸惑った様子だ。「公表して注意を呼びかけたいが、かえって悪用目的の人から注目を集めてしまうのでは…」とジレンマを抱える担当者もいた。 政府は2023年にまとめた指針で、省庁や自治体に対し、公的機関しか取得できない「go.jp」「lg.jp」などを使うよう求めている。出品されているドメインは、こうした公的機関専用のドメインではなく、誰でも取得できる一般的なドメインのため、転用されてしまう。