「肉がジューシーで存在感すごい…!」実は意外と難しい“肉じゃが”、誰でも圧倒的に美味しく作る隠し技
料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作れる方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回は意外と難しい肉じゃがです。 【写真】肉の存在感がすごい!ジャガイモもホクホクの肉じゃが ■肉じゃがの手法は大きく「3型」 家庭料理の定番、肉じゃが。作るのが意外と難しく、同じ材料、同じレシピで、同様に調理をしても、作る人によって味わいが変わってくる料理です。
肉じゃがのレシピは人によってさまざま。材料も 肉 牛または豚 水分 だしまたは水 副食材 ニンジン、シラタキなど などの違いがありますが、注目するべきポイントは材料ではなく、手法です。肉じゃがには大きく 1 煮含め型 2 すき焼き型 3 蒸し煮型 の3種類の作り方が存在します。 「煮含め型」は肉とジャガイモ、玉ねぎを炒め、出汁を注ぎ、醤油を中心とした味付けでことこと煮る方法。優しい味に仕上がるのが特徴で、作り置きをしても味の劣化が少ないことから料理店などで採用されています。
「すき焼き型」は同じ具材を炒めた後、割り下に近い配合の調味料を注ぎ、強火で煮上げる方式です。ご飯によく合う濃い味に仕上がります。料理研究家の小林カツ代さんが考案したレシピが代表的でしょうか。 「蒸し煮型」は炒めるところまでは同じですが、蓋ができる厚手の鍋を使って、少ない調味料で蒸し煮にしていくスタイル。こちらも「すき焼き型」同様、短時間で仕上がりますが、素材の味を生かす点に特徴があり、一番、現代的なレシピです。
「肉じゃがはそもそもじゃがいもと薄切り肉という加熱時間の異なるものを同時に加熱するという不合理な料理」 というのはこの料理を紹介するとき、筆者がいつも強調する部分ですが、この料理が難しいのはこの部分。どのような手法を使ってもジャガイモはやわらかく、肉はそれなりにジューシー感を残す必要があります。 ポイントはジャガイモの加熱温度です。野菜にはそれぞれ固有の「軟化温度=やわらかくなるために必要な温度」がありますが、ジャガイモのそれは95℃以上とやや高め。それよりも低い温度、とくに60~70℃付近で加熱するとペクチン硬化という現象が起きるので、やわらかく煮えないのです。