偵察活動や「道路啓開」を行いながら…自衛隊を「被災地へ一気に派遣できなかったワケ」【現場ルポ】
能登半島地震の災害派遣で活躍する自衛官たち。陸海空の垣根を越えて統合任務部隊として動員されており、約1万人体制で今回の災害派遣に従事している。彼らは現地で何を行っているのか、大まかには「人命救助」「衛生支援」「物資輸送支援」「給食支援」「道路啓開」となる。「一刻も早く自衛隊を派遣すればいいじゃないか」といった意見がネット上などでも散見されるが、むやみやたらに派遣できるわけではない。そのワケは現地の状況を把握したうえで、どの程度の人員や資機材が必要となるか判断することが先決だからである。 【画像】ひどい…!被災地の「ヤバすぎるトイレ事情」写真…! 今回の地震が発生した1月1日の夕刻に北海道の千歳基地より戦闘機2機が自衛隊による自主派遣として偵察活動を実施。その後16時45分に石川県知事より陸上自衛隊に災害派遣要請があり、即刻受理された。陸上自衛隊は各地の駐屯地からヘリコプター8機、同時に航空自衛隊も戦闘機などが7機、海上自衛隊も3機と合計18機の航空機が被災地上空で偵察活動を行った。偵察飛行の情報をもとに、まずはヘリ部隊を編成して現地へ隊員輸送を行い、同時に接岸可能な海岸などから艦艇による部隊派遣、そして「道路啓開(緊急車両などが通行するために、瓦礫処理を行って救援ルートを開けること)」を行いながら地上部隊が車両により能登半島各地に入ったのである。 筆者が現地入りした際、道路のあちこちが土砂崩れで寸断されており、遠回りを余儀なくされる場面が多々あった。だが、日に日に通れなかった道路が通れるようになり、昼夜を問わず自衛官らが重機などを使用して道路啓開に奮闘していた。次第に民間の建設会社に引き継がれて、別の土砂崩れ現場の復旧に移動する場面も多く見かけた。 また、ヘリでの救助活動も連日行われており、着陸できる場所での救助は着陸するが、不可能な場合は上空から救助隊員が降下して救助者を吊り上げる手法でも行っていた。ヘリはどこへでも着陸できるイメージがあるが、風向きやその他の天候条件や土地建物などの環境で大きく左右されるため、着陸するにあたっても万全を期して対応しているのだ。 人命救助や急患輸送なども警察や消防など他機関と連携のうえ行われており、組織の垣根を越えて行動している。 普段、自衛隊を批判している政党や団体等が、このような時だけ早く派遣しろなどと主張しているが、現地の状況もわからぬまま派遣しては混乱が生じて不要な事故が発生するだけである。自衛隊は常に冷静沈着に行動し、日本の生命と財産を守り続けている。 撮影・取材・文:有村拓真
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