半沢直樹SPで人生倍返しの無名女優、吹越ともみ “30歳・コンプレックスの塊”からの逆転
容姿に劣等感、芝居に恐怖 しかしあきらめず
中学生のときから芸能好きな親の影響もあって、常にエンタメにふれて育ってきた。しかし吹越本人は、劣等感の塊だった。 「私、ガリガリに痩せて、容姿にコンプレックスがあったんです。でもティーンのファッション誌で同世代の可愛いモデルさんを目にして、私もきれいになりたい、可愛くなりたいという思いが強くなっていきました。こういう世界へ行ければ私でも輝けるのかな…そんなことはまったくないんですけど、幼いながら少しの希望が芽生えました」 大学時代はフリーペーパー「美少女図鑑」に出たり、さまざまなオーディションに応募するが落選の連続。しかし夢をあきらめきれず、働いて貯めたお金をはたいて東京へ単身、転居した。 「芸歴もなく事務所も決まっていない状態で無茶なんですけど。まずは人に見てもらわなくちゃ始まらないと、フリーでサロンモデルや読者モデルをやったのですが、やっぱり人気なんて出ませんでした。女優へのあこがれもありましたが、当時はお芝居をするのが怖かった。できない自分を目の当たりにすることへの恐怖があったんです」 加えて年齢もコンプレックスになっていくなか、現在の事務所に所属し、ここ一年ほど芝居の勉強に集中した。 「ワークショップに参加したりお芝居のレッスンを受けてきましたが、でもまだ一年です。ただ、CMのお仕事などは割とストーリー性のあるものが多かったので、現場で学ばせていただいた部分が大きいかもしれません」
友達もいない東京で“現場”に居場所見つけた
アルバイトをしながら、芸能の勉強と仕事をこなす日々が続く。そんな出口の見えない生活を送る中、なんとかモチベーションを保てたのは「現場が好き」という気持ちのおかげだという。 「とにかく現場が大好きなんです。東京には友達もまったくいない状況だったので、現場に自分の居場所があるということが一番モチベーションを保てる部分でした。現場に行きたい、っていう思いだけで過ごしてきたような気がします」 そして、もう一つ。 「食べることが大好きなので、現場のみんなでロケ弁とかケータリングをいただくときが一番幸せなんですよ。明日もロケ弁食べたいから頑張ろうって(笑)」 やっとつかんだ今回のチャンスだが、収録現場は温かかったという。 「ふだんテレビで見ている方々に囲まれて、最初は現実味が本当になくて。皆さんも最初キャスト表や台本を見て『この吹越って女優、誰なの?』って感じだったと思うんです。でも、初日に吉沢悠さんから『インスタとかで検索したよ』って言われて感動しちゃって。そこで会話を広げてくださったおかげで、一気に皆さんの一員になれた感があって、お話もできるようになりました」 今後は、どんな女優になりたいのか。 「深津絵里さんや坂井真紀さん、石田ゆり子さん、品があるけどちょっとおちゃめな部分もある大人の女性にあこがれます。私自身はまだまだ未熟なので、いただいたことを精一杯やるだけですが、きれいな女優さんたちからエネルギーをいただいて生きてきたので、女性に好かれるような、同性に親近感を持ってもらえる人になれたら嬉しいです」
「これは偶然じゃなかった」と思っていただけるように
昨年は「こうやってみんな諦めていくのかな」と、地元へ戻ることを考えたという吹越にとって、今回のキャスティングは奇跡に等しい出来事だ。 「でもドラマを観ていただいた皆さまに、けっしてこれは偶然じゃなかったんだって思っていただけるような活躍が今年できたらいいな、と強く思っています」 スタートを切るのに年齢なんて関係ないし、どんな状況だって夢を持てる。吹越ともみが証明してくれることを期待したい。 (取材・文・撮影:志和浩司)