新興国の投資機会を幅広く捉えて年20.8%のトータルリターン、「新興国ポラリス」の着眼点
ピクテ・ジャパンが設定・運用する「ピクテ新興国ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド(愛称:新興国ポラリス)」は、設定から1年間が経過した2024年9月末時点で設定来のトータルリターンが21.80%になった。これはウエルスアドバイザーの「バランス型/バランス」カテゴリー281本の中でトップ5%に入る優れた成績でリスク当たりのリターンを示すシャープレシオは2.9とカテゴリーの中で第4位に入る素晴らしい運用成績になった。同ファンドの運用責任者であるピクテ・アセット・マネジメントのマルチアセット・ロンドンの共同ヘッドであるシャニエル・ラムジー氏(写真)に当ファンドの投資戦略を聞いた。 ――「新興国ポラリス」は、新興国の様々な資産クラスに投資して魅力的なリスクプレミアムの獲得をめざすファンドですが、世界の様々な資産クラスに投資する「ポラリス」と比較すると、より高いリターンが期待できると考えて良いのでしょうか? 「新興国ポラリス」と「ポラリス」は、同じ資産クラス(株式、債券、ゴールド)を投資対象とし、同じ愛称を持つファンドですが、それぞれを運用するチームは異なり、互いのポートフォリオやパフォーマンスを意識するようなことはありません。先進国と新興国では、おのずと投資環境もリスクも違いますから、それぞれに異なる運用をしていると考えた方が良いと思います。 「新興国ポラリス」では3つのリスクプレミアムに注目しています。「企業の利益成長」と「人口成長」と「資源」です。 「企業の利益成長」については、例えば「高配当株」に投資することで企業の利益を配当という形で効果的に享受することができます。 「人口成長」は、例えば労働人口が増えている国の株式に投資しています。人口が増える国に投資することによってリターンを上げることができると考えています。 「資源」は先進国が持っていな石油や鉱物、農業、ゴールドなどを新興国では豊富に持っている国があります。このような資源が豊富な国の国債に投資しています。この資源国国債は新興国の債券の中で、高いリターンを出しています。 ――「新興国ポラリス」でゴールドに期待している役割は? 1つ目は高いインフレに対するリスクヘッジ手段として使っています。新興国のインフレ率は大きく変動することがあります。 2つ目は新興国の中央銀行がゴールドを買っていることに由来します。中央銀行は通貨の変動を抑えるために外貨準備として、ゴールドの保有を強化しています。日本の投資家にとっても日本円の変動が海外投資での大きなリスクになっているように、日本の投資家にもゴールドはスタビライザー(不規則で不要な揺れを抑える装置)の役割を果たすことができると思います。 3つ目は予測できない大きな変化への備えです。戦争や選挙のリスクなどの変化にゴールドは有効なスタビライザーになります。 新興国には様々な変化の可能性がありますから、それらの市場変動に対するスタビライザーとしてゴールドは非常に有効なのです。 ――「新興国ポラリス」のポートフォリオで債券に投資する意義は? 新興国は国によって株式の方が投資対象として魅力的な国と、債券に投資した方が良い国があります。私たちは新興国を広く見て、どの資産に投資するのが最も効果的かということを常に考えています。たとえば、ブラジルやメキシコ、南アフリカなどは債券からリターンを享受できます。 普通のバランスファンドでは、債券をポートフォリオに組み入れるとリスクは抑えられるものの、期待リターンが大きく下がってしまうようなことがあります。新興国の面白いところは、株式と同じくらいの期待リターンが獲得できる債券があるということです。これらを組み合わせることによって、非常に魅力的なポートフォリオを構築することが可能になります。 ――「新興国ポラリス」では意図的に円資産の比率を変化させていますか? 日本の投資家にとっては日本円の価格変動率が大きいことがリスクになっています。私たちも円の価格変動を意識して日本円の変動をリスク管理するようにしています。日銀をはじめ各国の中央銀行の動向をウオッチしていて、リスクをとれる環境では為替ヘッジを外して積極的にリターンを狙いにいきますし、リスクを抑えた方が良いと考えた場合には為替ヘッジの比率を高めます。 ――今、市場の変動要因として、もっとも注意を払っていることは何ですか? 非常に悪いリセッション(景気後退)です。景気が悪くなると米ドルが非常に強くなって、エマージング市場から資金が引き上げられるようになります。その場合は、「新興国ポラリス」ではゴールドがリスクヘッジの手段にはなります。 メインシナリオは、世界経済はソフトランディングに向かっていて、米国は利下げを継続するとみています。新興国の経済成長率は先進国を上回る状態が続いてきました。中国にも改善がみられるようになってきました。中国の成長は新興国にポジティブな影響を与えるので、現在は新興国に投資するのに面白いタイミングになってきたと思っています。 ――当面の運用環境をどのようにお考えですか? 「新興国ポラリス」は2023年9月の設定来、1周年を迎えます。設定来20%程度のプラスリターンが得られていますが、このリターンの水準は期待通りですか? 設定から1年間は新興国からリターンを得やすい環境だったといえます。株式、債券、ゴールドの主要投資対象から、いずれもプラスのリターンを上げることができました。 来日して日本国内の投資家を訪問して思ったのは、どの投資家も同じような投資対象を保有しているということでした。米国株式、テクノロジー株式、半導体株式、新興国についてはインドの一カ国に集中している印象を持ちました。私は、日本の投資家の皆様に、ポートフォリオをもっと分散して欲しいという強い思いがあります。 「新興国ポラリス」は、非常にポテンシャルの高いファンドだと思っています。ぜひ、既存のポートフォリオに加える次の投資対象としてご検討していただきたいと思います。新興国資産には投資する魅力のある資産がたくさんあります。その魅力に多くの方々に気が付いていただきたいと思っています。
ウエルスアドバイザー