「ハエの触角に目ができる」…!? かつてクローン技術の最前線で行われていたヤバすぎる「裏の研究」
「iPS細胞技術の最前線で何が起こっているのか」、「将棋をはじめとするゲームの棋士たちはなぜ人工知能に負けたのか」…もはや止めることのできない科学の激動は、すでに私たちの暮らしと世界を変貌させつつある。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 人間の「価値」が揺らぐこの時代の未来を見通すべく、“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が語り合う『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋してお届けする。 『人間の未来AIの未来』連載第1回
簡単に「クローンを作れる」
羽生教科書にもすべての遺伝情報を持っているのは生殖細胞だけだと書かれていたわけですね。 山中そう書かないとマルをもらえない。でも、それに疑問を持った研究者が現れてきて、最初は個々に研究していたと思いますが、ジョン・ガードン先生が「クローンカエル」を作って、すべての情報が大人の細胞に残っていることが証明されました。それが1962年ですから、先生はそれから実に50年を経てのノーベル賞受賞になったんです。僕はそれにちょっと便乗したと言ったら変ですけど――。 羽生いえいえ、とんでもない。 山中クローン技術は非常に難しい技術なので、なかなか成功しないんです。哺乳類で成功したのが1996年です。クローンカエルから30年以上かかって、イギリスのイアン・ウィルマット先生が、「ドリー」という――。 羽生ああ、羊の。ニュースで見た記憶があります。 山中羊のドリーは、哺乳類で初めて成功したクローン動物です。それによって、カエルだけではなくて、哺乳類も全遺伝子情報をちゃんと保持していることが証明されました。ただ、哺乳類のクローンは非常に難しくて、職人的な人が試みて百回に一回成功するかどうかの技術でした。 それがiPS細胞という技術を使うと、誰がどこでやっても「逆戻り」する。そういう技術を僕たちが作りました。50年前にガードン先生がされたことが誰でもできるようになった。それで二人で同時に受賞できました。だから、実際は研究が始まってから50年かかっています。