【香港】市民の経済満足度が大幅悪化 2年半で最低、生活への不満も
香港市民の経済満足度が大幅に低下している。最新の世論調査では過去2年半で最低の水準を記録し、域内消費の低迷などに伴い香港経済に対する市民の心理状態が悪化していることが浮き彫りになった。市民生活への不満も高まっている。政府トップの李家超(ジョン・リー)行政長官は来月16日に施政報告(施政方針演説に相当)を行う予定で、ここで強力な景気対策を打ち出せるかどうかが注目されそうだ。 世論調査機関の香港民意研究所(HKPORI)が24日発表した調査結果で明らかになった。調査は2~4日に18歳以上の市民を対象に電話で実施し、673人から回答を得た。 社会状況に対する質問では、香港の政治、民生、経済のそれぞれについて現状に満足か不満かを聞いた。このうち経済に関しては、満足との回答が全体の19%だったのに対し、不満とした回答の割合は67%に上り、満足から不満を引いた満足度はマイナス48%だった。 7月の前回調査に比べると、満足が5ポイント減って不満は6ポイント増え、満足度は11ポイント低下した。不満を訴えた市民の割合は74%を記録した2022年3月以来の高さで、満足度はマイナス50%だった22年4月以来の低水準となった。 民生については、満足が28%、不満が55%で、満足度はマイナス27%だった。前回から不満は横ばいだったものの満足が4ポイント減り、満足度はマイナス幅が4ポイント拡大した。22年5月(マイナス32%)以来の低い満足度となっている。 一方、政治への満足度はやや改善した。満足との回答は前回を1ポイント下回る39%だったが、不満との回答が4ポイント減って42%に低下したため、満足度は前回よりもマイナス幅を3ポイント縮小してマイナス3%だった。 ■議員「小売業の救済を」 同調査では、満足または不満との回答に対して、その理由にまでは踏み込んでいない。ただ背景には、市民が隣接する中国広東省深センなどへ出かけて消費する「北上消費」の常態化や、域外労働者の導入に伴い一部職種で雇用不安が生じていることなどがあるとみられる。 立法会(議会)議員の田北辰(マイケル・ティエン)氏は24日、フェイスブックへの投稿で「小売業が直面している苦境は、中国への返還(1997年)以降で最大と言える」と言及。小売業の景気は香港全体のムードに直接影響するとして、消費低迷によって各地で増えている空き店舗を減らすことが消費者心理を改善させると訴えた。 田氏は「政府が速やかに救済の手を差し伸べる必要がある」と強調。具体的な対策として、店舗物件の固定資産利用税(レーツ)を1年間免除することなどを提案した。 ■パンダの経済効果に期待 李行政長官は就任後3回目となる今年の施政報告で、経済対策と市民生活の向上に焦点を当てる方針を表明している。今回の調査ではそのどちらに対しても、市民の不満が新型コロナウイルス禍後で最高の水準まで高まっていることが示された形になる。 李氏は24日の定例会見で施政報告に関する発言は行わなかった一方、ジャイアントパンダが景気回復の起爆剤となることに期待感を示した。飼育施設がある香港島南部の香港海洋公園(オーシャンパーク)では8月に双子のパンダが誕生しており、きょう26日には中国中央政府から香港に贈られたつがいのパンダも四川省から到着し、香港のパンダは6頭となる。 李氏は、新たに贈られたパンダの一般公開が12月中旬ごろになるとの見通しを示した上で、12月には香港郵政がパンダの記念切手や記念商品を発売すると表明。このほか、政府文化スポーツ・観光局と政府観光局(HKTB)、海洋公園が各界と協力し「パンダブームを利用して商機を生み出す」と述べた。飲食業や小売業などがパンダ関連のさまざまな商品、イベントを企画し、消費を促進していくことを奨励するとしている。