3坪の木造物件が8000万円で落札!インバウンド需要に沸く「新宿ゴールデン街」が外国人だらけになった「本当の理由」
外国人観光客でごった返す街
今年4月、新宿・歌舞伎町の飲食店街「新宿ゴールデン街」にある3坪(9.91平米)の物件が競売にかけられ、8000万円(正確には80,000,001円)で落札された。売却基準価格は775万円で、その10倍以上の値段が付いたことになる。 【写真】「お前は騙されている」AV界の伝説・吉沢明歩が振り返る「親バレ」の瞬間 「長い間競売物件をウォッチしていますが、札数100は極めてレアなケースです。今回は法人が最終的に落札したようですが、それだけ欲しいと思う人が多かったのでしょう」(不動産投資家) 坪2666万円――。令和6年の歌舞伎町の公示地価平均が1375万2066円/坪であることを考えても、「眠らない街」にあって相場の倍額がついたわけだ。いくら一等地とはいえ、上物自体は歴史と貫禄を感じさせる木造スレート瓦葺の2階建てと表現すれば、割高に感じる向きもあるだろう。後述するが、ゴールデン街の物件は簡単に取り壊しや建て替えがしづらい事情を抱えており、不動産としての運用も「玄人志向」が求められる。 サッカースタジアムほどの土地に300軒弱の飲食店が連なるこの地は、戦後闇市の移転から非合法の売春宿、いわゆる「青線」から文化人の集う飲み屋街へと変容し、今では外国人観光客でごった返す。多くの建物は昭和20年代に新築されており、今回の落札物件もそれに当てはまる。 バブル時にはさまざまな方面からの強烈な地上げに遭い、それが崩壊すると価格が暴落。若いオーナーが店を構えるようになった。店主の高齢化で世代交代が進み、街の空気は少しづつ変わってきた。コロナ禍に見舞われも、それを街ぐるみで乗り越えてきたディープでエネルギッシュな街は、さらに新しいフェーズに差し掛かっている。
世界的に「珍しいエリア」
そもそも、外国人観光客はどうやってゴールデン街を知り、何を目的に訪ねてくるのか。自身もかつてある店にバーテンとして立っていた、在日アメリカ人男性はこう見ている。 「ゴールデン街は何年も前から外国人に有名で、インスタグラムや旅行サイトだけでなく、実際に訪れた人の『口コミ』で来訪を決める人もいます。旅行慣れしている人は『観光客向け』の店に入ることを嫌いますが、その点ゴールデン街は観光地っぽさを感じさせない、個性的な店が多い。ひとつのエリアにこんなに多くのバーが集まっているのは、世界でもそうそうありません。 また、これだけ多くのバーが朝までやっているのも珍しいです。アメリカのほとんどの都市では、バーの営業時間について非常に厳しい法律があり、決まった時間に閉めなくていいのは本当に珍しいです」 コロナ禍以前でいえば19年のラグビーW杯が日本で開催されたとき、ゴールデン街はインバウンドのピークを迎えた。その後、海外との往来が本格的再開した23年の5月ごろから外国人の来訪が増え、今では主となった。店子も対応を迫られる。あるバーの店員が言う。 「観光客が入ってきやすいのか、1階の店は外国人が全卓埋めているところも最近は多いです。英語のメニューを用意したり、『English OK』と入口に張り紙を貼ったり、簡単な英語ができるスタッフも結構増えてきました。インバウンドの売り上げ目標を立てているストイックな店もあるとか。 お客さんが入ってくれるのはありがたいことです。ただ、外国人客はいろいろと未知数ですね。一杯だけ注文して何時間も居たり、会計が納得できないと英語でまくしたててきたり。女性店員が一人で立っているとわかると、強気に出てくる人もいるんですよ。 また、『チャージ』の概念が理解できない人が多いようです。大多数の店が1000円前後のカバーチャージ料金を取っていますが、『ノーチャージ? 』と繰り返し聴きながら街を彷徨っている外国人観光客が結構います。 旅行先の飲み屋でケチるのか…と思いきや、『楽しかったから、貰ってくれ』とチップで1000円渡してくれたりする客もいるので、単純に文化の違いなのかなと」