子どもの後継者が急減!中小企業の事業承継「息子に継ぐ」が4割未満に、後継者難・高齢化で経営者が伝えるべきこと
■ 親族以外への承継が難しい3つの理由 もっとも、子どもに承継させることができないからといって簡単に親族以外に承継できるかというと、ことはそう単純ではない。中小企業においては主に3つの理由で、親族以外への承継は容易ではない。 第1に、子ども以外の後継者候補を探すことが難しい。 まず候補として挙がるのは従業員だが、規模が特に小さい企業では、家族以外の従業員がいなかったり、いたとしても経営者と同年代であったりするなど、後継者として適当な従業員がいないことが多々ある。 第2に、候補となる従業員がいたとしても、事業の承継を承諾してくれるとは限らない。 事業を承継するなら、もうかっている事業を継ぎたいと思うのは自然なことであり、好んで赤字の企業を継ぎたいとは思わない。経営者の子どもであれば、家業としての思いや従業員への責任などから、赤字でも承継することがある。 しかし、親族以外の場合は、業績が良かったり何らかの強みがなかったりしなければ、承継を承諾してもらうのは難しいだろう。事業の売却や譲渡などの第三者への承継も事情は同じである。 第3に、事業の承継を承諾してくれても、親族以外の後継者候補は実際の承継までに乗り越えなければならない問題がある。 株式や事業用資産の買い取りはその典型といえる。相続や贈与という方法で株式や事業用資産の譲り受けが可能な子どもと違い、親族以外の後継者は買い取るための資金を用意しなければならない。その負担が重いことで承継を諦めるケースもみられる。
■ 親の事業を「継ぐ」「継がない」その分かれ目 こうした問題もあって、比率が低下しているとはいっても、経営者の子どもは依然として有力な後継者候補である。子どもが継がなければ自分の代で廃業することになると考える経営者も少なからずいる。 中小企業において事業承継を進めるためには、親族以外への承継の促進はもちろん大切だが、並行して経営者の子どもに承継を促す取り組みを実施していくことも必要だろう。 では、子どもに事業を承継してもらうには、どうすればよいのだろうか。当研究所が2021年に経営者の子どもを対象に実施した「子どもの事業承継意欲に関する調査」の結果をもとに考えてみよう。 【興味のある方はこちらもご覧ください】 まず、親の事業を承継する意欲がある人(以下、承継意欲あり)に、親の事業を継ぐ理由を尋ねた結果をみると、図1のとおりである。 「事業経営に興味があったから」(34.9%)をはじめ、「事業内容にやりがいを感じたから」(22.2%)や「収入が増えると思ったから」(16.1%)など事業の魅力を挙げる人が多い。「自分は経営者に向いていると思ったから」(20.5%)や「仕事の経験・知識や資格を生かしたかったから」(12.1%)といった能力発揮に関する理由も多い。 一方で、親の事業を承継するつもりがない人(以下、承継意欲なし)に、継がない理由を尋ねた結果は、「事業経営に興味がないから」が35.4%と最も高い。次いで「必要な技術・ノウハウを身につけていないから」が26.5%、「自分は経営者に向いていないと思うから」が26.2%となっており、事業への無関心や能力不足を指摘する人が多い(図2)。 継ぐ理由と継がない理由を並べてみると、事業への興味や本人の能力に関する項目が共通して高い割合になっている。魅力的な事業であるかどうか、事業を行う能力があるかどうかが、子どもの承継意欲の有無に大きな影響を及ぼしていると考えられる。 ■ 事業の内容は伝わっているか 実際、承継意欲ありの方が承継意欲なしよりも、親の事業に魅力があり、事業を行う能力があると考えている割合が高い。 親の事業の業況をみると、承継意欲ありでは「良い」が23.2%、「やや良い」が40.2%と、計63.4%が業況は良好であると回答している。対して承継意欲なしではそれぞれ7.1%、20.1%の計27.2%である。その差は36.2ポイントにもなる。 業況が良ければ、それだけ事業の継続が容易で、高い収入も期待できる。魅力的な事業といえるだろう。 事業を行う能力に関して、親の事業に対する適性があると思うかを尋ねた結果をみると、承継意欲ありでは「大いにある」が23.4%、「ある程度ある」が41.6%となっており、合わせて65.0%が適性を感じている。承継意欲なしのそれぞれ2.7%、8.2%の計10.9%と比べてかなり高い値である。承継意欲なしでは「まったくない」が50.7%を占めている。 ただ、承継意欲なしでは承継意欲ありと比べて「わからない」と回答した人が多い。親の事業の業況については、承継意欲なしでは36.1%、承継意欲ありでは10.9%が、親の事業の適性については、それぞれ22.1%、11.9%が「わからない」と回答している。承継意欲なしには事業の内容について詳しく知らない人が相対的に多いことを示す結果といえる。 事業の内容を知らなければ、仮に事業に魅力があったとしても、魅力はないのと同じである。適性があるかどうかも判断できない。承継を考えてもらうためにも、まずは事業の内容を子どもにしっかりと伝えることが重要だろう。