人間の力ってすごい、加藤和樹が「奇跡の舞台」で表現したいこと
◆「やれることと言ったら、やっぱり表現しかない」
──加藤さんがメインで演じるのは、生粋のニューヨーカー・ボブですが、モデルになった人と話をしたと聞きました。 リモートで質問する機会があったので、実際の島での生活はどうだったのかをうかがいました。最初は本当に不安しかなかったけど、それは1日でなくなったと。本当に島の人たちが温かくて、お酒もおいしくて、今世界が大変なことになっているのを忘れるぐらい楽しかったそうです。でも(舞台の)ボブはニューヨークで暮らしているから、人のやさしさには裏があると思うんですね。「家に来てシャワー浴びて、なんなら泊まりなよ。食事もあるよ」と言われても、最初は「財布を盗まれるのでは?」とか考えてしまう。 ──生き馬の目を抜くニューヨークだと、ちょっと考えられないですよね。 でも、ニューファンドランドの人たちは、本当に単純にやさしい。「困ってたら助ける。当たり前だろう?」というやさしさに触れることで、ボブは大きく変わります。人と人がつながることで生まれる愛とか力とかが、ものすごく表現されている作品だし、自分にもなにかやれることがあるんじゃないか? と、踏み出すきっかけにもなると思います。 ──テロや災害って、どうしても人間の悲惨な面ばかりが報じられがちですが、その裏では善意を持って、助け合って生きる人たちも必ずいる、ということに気付かされるはずです。 世界各国では戦争も起こっていて、本当は人間って、こうやって手と手をつなぎ合って生きていかなきゃならないのに・・・と、悔しい気持ちにもなります。でも昔から人と人が支え合っていたからこそ、現代これだけの文明ができたわけだし。(劇中にも)本当に人間の力ってすごい!と感じる瞬間がいくつもあるので、ぜひそれを感じてもらいたいです。 ──実際にそういう善意に支えられていると、加藤さんも感じることはありますか? あります。我々の仕事は常にお客さまに支えられて成り立っている商売なので。コロナのときに、それをすごく感じました。お客さまがいなければ、我々は表現できる場もなければ、収入もない(笑)。でもやれることと言ったら、やっぱり表現しかないので、コロナを経て「自分の生活には、やっぱりエンタメが必要なんだ」と言ってくれる方たちに支えられたと思うし、そういう人がいる限りは続けていきたいです。