日鉄のUSスチール買収計画、米大統領選年の政治的渦の真っただ中に
やはり同州選出のケーシー上院議員(同)も計画に疑念を表明し、ホワイトハウスのブレイナード国家経済会議(NEC)委員長は国家安全保障の観点から米当局による精査に値するとの考えを示した。
その後、バイデン大統領は3月14日、「米鉄鋼労働者には私がついていると伝えた。それが私の本心だ」とする声明を発表し、USスチールに対して米国資本の企業として存続するよう求めた。
USスチールの株価は同日の取引で、日鉄による買収計画発表直前の12月半ば以来の安値に下落。現在は日鉄による1株当たり55ドルの提示額を20%余り下回って推移している。
首脳会談
バイデン大統領は4月10日、ホワイトハウスで行われた岸田文雄首相との会談後の共同記者会見で、買収に反対する米労働者への支持をあらためて表明したものの、USスチールに米資本を維持するべきだとする先月示した考えを繰り返すことはなかった。岸田首相はプロセスの前向きな展開に期待を示した。大統領は、米国として日本との「同盟に対するコミットメント」を堅持すると強調した。
バイデン大統領の発言は姿勢の大幅な変化を示唆するものでなかった一方、大統領はUSスチールについて米国の鉄鋼会社として国内で保有され、経営を続けていく必要があるという、先月の発言を強調することは控えた。両首脳の発言を受けて、USスチール株は同日の取引で一時1.7%高となった。
バイデン氏、資本維持に言及せず-日鉄のUSスチール買収計画
審査
買収計画は現在、対米外国投資委員会(CFIUS)による審査対象となっている。通常はロシアなど米国に敵対的な国々が対象になるプロセスで、長年にわたる米国の主要同盟国である日本の企業が審査を受けることはない。また、審査結果は法廷で争われる可能性もある。
ピッツバーグなどを選挙区に含むデルジオ下院議員(民主)はインタビューで、「当初の計画を阻止すべきだと思う」とした上で、「どのような結果になるとしても、弁護士が双方の主張を展開することになるだろう」と述べた。