【サッカー日本代表 板倉滉の「やるよ、俺は!」】第15回 vs北朝鮮、板倉が語る"未知"との向き合い方
■広州恒大アウェー戦、ほろ苦い記憶 未知の環境、アウェーの洗礼で最も強烈に残っている記憶は、川崎フロンターレに在籍していた20歳のとき、アジアチャンピオンズリーグ第3節、広州恒大とのアウェー戦(17年3月14日)である。 天河体育中心体育場は5万人ぐらいの人が入っていてすさまじいほどのテンションだった。 僕はボランチとして出場、マッチアップの相手は当時ブラジル代表として活躍していたMFパウリーニョ。彼を食って、チームでレギュラーを獲りたいという一念で試合に臨んだ。 けれど、気合いだけが空回りしてしまい、スタジアムの雰囲気にものまれてしまった。結局、前半34分に交代。今でもほろ苦い思い出として記憶に残っている。 おそらく、平壌の雰囲気はあの広州での試合に近いものになっていたはずだ。平壌での日本代表の成績は2敗2分けといまだ勝利なし。 そういった逆境はどのようにはね返すのか。まずは、したたかにプレーすること。きれいなサッカーをしていてもきっと勝てない。ホームの北朝鮮はさらに闘志むき出しでかかってきただろうし、VARも導入されない分、激しいプレーの数も必然的に多くなっただろう。 試合が止まることも一度や二度では済まないはずだ。落ち着かせるところはちゃんと落ち着かせて賢くプレーすることが圧倒的にアウェーな環境に飲み込まれないポイントだと思う。 チーム全体で考えると、精神的支柱の存在も重要だ。今回、(長友)佑都さんが戻ってきて、影響力の大きさを感じた。 アジア杯カタール大会以降、精神的支柱となる選手の存在が必要不可欠という思いは常にある。やっぱり、佑都さんの熱さと存在感はすごいなと思う。(遠藤)航君のキャプテンシーもチームの基盤となっている。だから僕も守備の要としてしっかりとカバーしていきたい。 未知の環境での戦いは"冒険"と言ってもいいだろう。北朝鮮戦であれば電子機器がまったく使えないとか、サッカー日本代表でなければ味わうことができない貴重な人生経験になったはずだ。 そんな機会はめったにないと、ワクワクしていた自分もいた。完全アウェーというシチュエーションも、楽しむぐらいの気概で臨めばきっと乗り越えられる。 いつもと違う環境に振り回されないようにするには、いつもどおりのスタンスで。あまり力まなくてよい。"平常心"こそが何よりも大切である。 構成・文/高橋史門 撮影/山上徳幸 写真/AFLO/JFA