邦人脱出に貢献「覚えていてくれてうれしい」 日本とトルコの歴史たどり、次世代とご交流 秋篠宮ご夫妻トルコご訪問同行記
1890年、オスマン帝国の軍艦エルトゥールル号が和歌山県沖で遭難した海難事故は、日本側が官民で救助にあたり、日本とトルコの友好の礎となった。ご夫妻は担当者の説明を受けながら、エルトゥールル号や、初めてトルコを訪問した軍艦「清輝」の模型を熱心にご覧に。担当者によると、遭難により多くの犠牲者を出したエルトゥールル号の乗組員らの写真に関心を示されていたという。
午後には宿泊先のホテルで、日本とゆかりのあるトルコ人と面会された。この席には、イラン・イラク戦争中の1985年、イランの首都テヘランに取り残された200人以上の在留邦人を移送したトルコ航空の関係者らが集まった。
当時、イラクが航空機の無差別攻撃を予告する中、トルコ政府の英断により、同国の救援機に多くの日本人が搭乗して難を逃れた。ご夫妻は、当時機関士や客室乗務員として脱出劇に貢献した人たちから詳しい状況を聞き、深い感謝を示されたという。
懇談後、客室乗務員だったアイシェ・オザルプさんは当時のことを「とても光栄に思っている」と振り返り「39年経っても、日本の方々がわれわれのことを覚えていることをうれしく思う」と顔をほころばせた。
■防災で交流、次世代につなぐ
夜には、ご夫妻はトルコ版「ぼうさい甲子園」の受賞者らと懇談された。日本国内で行われている「ぼうさい甲子園」は、阪神・淡路大震災の教訓を継承していくために、防災活動などに取り組んでいる子供らを顕彰する事業。一方トルコでは、日本のぼうさい甲子園を参考に、2021年から「防災教育教材開発コンテスト」として開催している。
6~9歳の子供を対象とした、マグネットを使った防災教材を開発したシェイマ・カイイノウルさん(9)の説明に、ご夫妻は真剣な表情で耳を傾けられていた。大人たちに向かって堂々と語っていたカイイノウルさんだったが、懇談後には「緊張した」と少女らしくはにかんだ。
コンテストに携わる土日基金のエミン・オズダマル副理事長は「トルコも災害に強い日本のようになるために、努力しなければいけない」と語った。
日本とトルコの友好の出発点から、未来につながる取り組みまで、両国の深い関係を確かめられた秋篠宮ご夫妻。7日にアンカラへ戻り、さらに100キロ移動して「オリエントの宮さま」として親しまれる三笠宮さまが長年支援してきた、アナトリア考古学研究所に足を運ばれる。(イスタンブール 吉沢智美)