第93回選抜高校野球 県勢2校、春の吉報 仙台育英/柴田(その1) /宮城
<センバツ高校野球> 震災から10年、被災地に優勝旗を――。29日に開かれた第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場校を決める選考委員会で、仙台育英(2年連続14回目)と柴田(初)が選ばれた。県勢の2校同時出場は2001年の第73回大会以来、20年ぶり2度目の快挙。吉報が届いたグラウンドには笑顔があふれた。大会の組み合わせ抽選会は2月23日。阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で3月19日に開幕し、両校のナインは東北勢初の全国制覇を狙う。【面川美栄、藤田花、滝沢一誠】 ◆仙台育英 ◇大舞台、日本一目指す 甲子園への切符が再び届いた。午後3時40分ごろ、多賀城市の同校多賀城校舎のグローリーホールで電話のベルが鳴った。遠藤和秀教頭(68)が受話器を取り、「丁重に受けさせていただきます」とひと足早い春の吉報を受け取った。 遠藤教頭は野球部の室内練習場で部員62人を前に「宮城や東北、被災地の代表として戦ってほしい。新型コロナウイルスの影響で外出できない人たちにはつらつとしたプレーを届けてください」と激励。感染防止のため大声は出せなかったが、選手たちはガッツポーズを見せたり帽子を投げたりと、無言だが全身で喜びを表現した。 打線の主軸を担う秋山俊外野手(2年)は「トレーニングの成果を実戦で出せるよう頑張る。初めて甲子園に臨むが、気負わずに試合を楽しみたい」と意気込んだ。 チームは昨年もセンバツへの切符を手にしたが、コロナ禍で中止に。夏の甲子園も幻となり、3年生は最終学年で全国制覇する夢を絶たれてしまった。しかし、「お前たちは日本一になるんだ」と後輩を激励。1、2年生が先輩の思いを受け継ぎ、秋季大会で連覇を果たした。 今年で東日本大震災から10年を迎える。須江航監督(37)は「節目の年として、柴田と一緒に勇気や希望を与えられるような大会にしたい。東北に住む者として、今年はいろいろな思いを乗せて大会に挑みたい」と語り、東北に悲願の優勝旗を持ち帰る決意を新たにした。 島貫丞(じょう)主将(2年)は「甲子園は小学校からの夢だった。先輩方の思いを背負って戦い、日本一を目指したい」と力を込めた。 コロナ禍で絶たれた先輩の夢を、後輩が実現する。 ◆柴田 ◇初の夢切符、勝利誓う 初めてセンバツ切符をつかんだ。柴田町の同校会議室に詰めかけた報道陣が見守る中、土生善弘校長(57)は緊張した面持ちで結果を待った。午後3時42分、電話のベルが鳴った。「謹んでお受けします」。土生校長は大会選考委員会からの連絡に力強く答えた。 野球部員は小雪が舞うグラウンドで、生徒や保護者に見守られながら吉報を待っていた。グラウンドに現れた土生校長が部員に出場決定を報告。「諸君の努力はもちろんのこと、家族の支え、創部35年604人のOBの思い、新型コロナで夢さえも奪われた3年生があってこそ」と出場の重みを伝えた。安堵(あんど)し、笑顔を見せた選手たちは「ありがとうございます」と一礼した。 選手たちは喜びをかみしめた。遠藤瑠祐玖(るうく)主将(2年)は前夜、「選ばれなくても気にするな」と平塚誠監督(48)からメールをもらったという。「考えないようにしていたけど、不安でいっぱいだった」 昨年の秋季東北大会は、ほぼ一人で投げきった主戦・谷木亮太投手(2年)を中心に、八戸学院光星(青森)など各県1位の強豪校を次々と破った。準優勝した実力がセンバツ出場校にふさわしいと評価された。 谷木投手は「うれしい」と表情を崩したが、「全国で戦うには、まだ自分のレベルが足りない。ピッチャーとしてのレベルをしっかり上げて、甲子園のマウンドに立ちたい」と気を引き締めた。 東北地区の代表に選ばれたが、2カ月後の舞台は甲子園。選手たちは「どこよりもレベルが低い」と口をそろえるが、新チーム結成以来、格段の成長を遂げた。冬場のトレーニングでさらにレベルアップし、夢の舞台で一試合でも多く勝ち上がることを誓った。