1個3500円!「生命の根源は消化管」と語るがん専門医は、なぜヨーグルトを作ったのか?──連載:教えて!GQドクター
「腸活」ブームを受けて、近年注目度が増しているヨーグルト。消化器外科・がんの専門医を務めた医師は、なぜ3500円のヨーグルトを自ら製造・販売するのか? 【写真を見る】1個3500円のヨーグルトをチェック!
腸のスペシャリストが作る高級ヨーグルト
「腸活」ということばが広く知られ、良好な腸内環境を保つために食物繊維や発酵食品、野菜などの摂取が推奨されている。腸活の盛況に伴い、種類が急増するなど近年注目が集まっているのがヨーグルトだ。健康のために毎日食べているという人も多いだろう。 そんな中、東京女子医大で35年間、消化器外科・がんの専門医を務めた医師で、現在自らヨーグルトの製造・販売しているのが、林和彦氏だ。そもそも、なぜ人体の健康にとって腸が重要なのか。腸内環境を整えることはどんなメリットがあるのか。同大病院副院長も務めた経歴を持つ、腸のスペシャリストに訊いた。 ──近年、腸活が盛り上がっていますが、良好な腸内環境は健康状態を保つうえで不可欠と言われています。 生命の基本は口と肛門、つまり消化管にあります。我々が生命維持活動をするためには、エネルギーを取り込まなければならず、その役割を担う唯一の機関が消化管なのです。どうしても「脳や心臓が命の根源」と思われがちで、これまで軽視されてきた背景があります。それが、近年「生命の根源は消化管」ということに気づき始めたというわけです。 ──いつ頃から、「生命の根源が消化管」といわれるようになったのでしょうか。 この10年くらいでしょうか。私がヨーグルトを作り始めたのが9年くらい前でしたが、当時腸内細菌を語れる医師はいなかったですし、書籍もほとんど出ていなかった。ましてやテレビなど、メディアで腸をテーマに特集されることもなかったですから。 ──今はメディアでも頻繁に腸内細菌や腸活が取り上げられていますし、腸活ブームの影響でヨーグルト市場も盛況です。市販のヨーグルトがこれだけたくさんある中、なぜ医師の立場でヨーグルトを作ろうと思い立ったのでしょうか。 きっかけは、自分のためでした。大学病院の副院長をしていた時に起きた医療事故対応に追われ、ものすごいストレスでげっそり痩せてしまって……。それまで快食快便が自慢だったのに重度の便秘になって、自分のお腹に聴診器をあててもまったく腸が動いていない。「大腸がんかも?」と思ったほどでした。定期的に健診も受けていましたし、検査結果も異常はなかったのですが、腸の動きがどうも確認できない。 ──当時は、具体的にどのような食生活をされていたのでしょうか。 食物繊維を多く摂る、玄米や野菜を多く食べる、納豆やキムチなどの発酵食品を摂る、ごぼう茶を飲むなど、一般的に腸活にいいとされている食生活を試してみたのですが、全然ダメ。ヨーグルトもいろいろな種類を試したけれどまったく状況が変わらず、薬に頼らざるを得ませんでした。そこで目をつけたのが、腸内環境改善効果が指摘されるヨーグルトだったんです。 ──合うヨーグルトがなくて、自分のためにヨーグルトを作ることを思い立ったのですね。 はい、その通りです。「消化器の専門家として、腸の機能を回復させる方法を自分で見つけるしかない」という一心でヨーグルトを作り始めたのですが、研究しているうちにおもしろくなってきました。自分のためだから、お金も手間も惜しまない。エビデンスがあるものをどんどん試して、「最強のヨーグルトになればいい」というスタンスでした。でも当初は全然ダメ。今思うと、素人がいきなり作れるわけがないんですよね。おいしくないどころか、「おぇ~」という感じで(笑)。