脱炭素化が深刻な食糧危機をもたらす?温暖化対策の“大きすぎる代償”
だが、主食穀物も、大豆とピーナッツを除く油糧作物も、塊茎も、どれ1つとしてそれができない。それらがマメ科の植物の窒素固定能力の恩恵を受ける唯一の方法は、アルファルファやクローバーやカラスノエンドウとの輪作を行うことだ。これらの窒素固定植物を数カ月育ててから、犂で地面の中に埋め、土壌に反応性窒素を補充し、次に栽培する小麦や米やジャガイモに吸収させるのだ。 ● 排泄物に頼った施肥は 非効率な重労働になる 伝統的な農業では、土壌窒素貯蔵量を増やす他の唯一の選択肢は、人間と動物の排泄物を集めて施すことだった。だが、これは窒素を供給する方法としては、本質的に骨が折れ、非効率的だ。こうした排泄物は、窒素の含有率が非常に低く、揮発損失(液体から気体への変換ーー排泄物の肥料が発するアンモニア臭は、耐え難いものになりうる)を免れない。 産業革命以前の栽培では、排泄物は村や町や都市で集め、積み上げたり穴に入れたりして発酵させ、畑に大量に施さなければならなかった。排泄物は、窒素の含有率が低いからだ。 十分な窒素を供給するには、通常、1ヘクタール当たり10トン、ときには最大で30トンが必要だった(30トンと言えば、ヨーロッパの小型車25~30台分に相当する)。 驚くまでもないが、これはたいてい、伝統的な農業では最も時間のかかる作業であり、栽培に費やす(人間と動物の)全労働の最低でも5分の1、多ければ3分の1を占めた。 有機性廃棄物のリサイクルは、有名な小説家が取り上げる話題とはとうてい言えないが、常に完全な現実主義者だったエミール・ゾラは、その重要性を捉え、自らの小説の主人公でパリの若い画家クロードは「有機肥料が大好きだった」と記している。 クロードは「市場で出る屑や、あの巨大なテーブルから落ちた食べかす」を、自ら進んで穴の中に放り込む。「それらは依然として命に満ちており、以前に野菜が芽を出した場所に戻された……豊かな作物として復活し、市の立つ広場に運ばれて今一度並べられた。パリは、何もかもを腐らせ、あらゆるものを土に還した。土は、死の破壊行為をけっして倦むことなく修復した」。 だが、それには人間の苦労がどれだけ必要だったことか!